エレガントな、ひたすらにエレガントで完成度の高いゴールに出会いたいのなら、佐藤寿人のプレーを見ればいい。しかし彼は、昨シーズンいっぱいでの現役引退を表明した。もう見ることはできない——。だから思いだそう、世界でもまれなストライカーがJリーグでプレーしていたことを。
■Jリーグ通算220ゴールの傑出したストライカー
この記事のテーマは、サッカーにおける「知性」の力である。優れた知性がいかにJリーグという舞台で輝きを放つか、佐藤寿人という希代のストライカーを素材に考えてみたい。
佐藤寿人は、過去20年間のJリーグで最も傑出したストライカーのひとりだ。J1通算404試合に出場して161ゴールは、大久保嘉人(現在東京ヴェルディ)の185ゴールに及ばないものの、J2での記録(156試合で59ゴール)を加えれば通算560試合で220ゴール。大久保(J2では48試合、18ゴール)の通算203ゴールを大きくしのぐ。
さらには、2004年から2015年にかけての12シーズン(うちJ2が2シーズン)連続2ケタ得点。興梠慎三(現在浦和レッズ)が2020年にJ1で9シーズン連続2ケタ得点の記録をつくったが、寿人の12シーズンのうち10シーズンがJ1での「2ケタ得点」であることを考えれば、それ以上の記録ということができる。
中村憲剛のことを書いたときにも、「中村」ではしっくりこず、記事を「憲剛」で通させてもらった。佐藤寿人についても、「寿人」とさせてもらう。もうひとつ、最近のメディアでは、引退した選手には「さん」をつけるのが通例になっているが、私はあくまでストライカーとしての彼を書きたいので、それも省略させてもらうことにする。