「ダービーに順位は関係ない」とよく言われるが、まさにそういう試合になった。
アーセナルのミケル・アルテタ監督は、自身の進退もかかるこの大一番でシステムも戦い方も変えてきた。4ー2ー3ー1のオーソドックスな並びにして、難しいことをしようとせずシンプルに攻守に選手を走らせた。
それは、内容よりも結果を求めるしかなくなったアルテタ監督の状況がさせた、古き良きアーセナルへの原点回帰に思えたが、実際には個で上回られてしまうチェルシー相手に対する見事な作戦だった。
4ー1ー2ー3でスタートしたチェルシーは、最重要選手であるアンカーのヌゴロ・カンテが攻撃時にはエミール・スミス・ロウに監視されてゲームから外され、守備時は右サイドのブカヨ・サカから左サイドのガブリエウ・マルティネッリまで広くケアする、という窮屈かつ負担の大きな状況に陥ってしまった。スイッチを入れられずに守備の食いつきどころを探りながらじわじわ後退させられ、守備的にプレーしていたはずのアーセナルのサイドバックが安全かつ深く上がってくる時間を作られてしまった。1失点目も2失点目も、チェルシーが完全に後手を踏んだ結果だった。