■サッカーのさらなる発展を

 もちろん、たくさんの課題がある。1チーム30人前後という現状の選手数は変える必要はないと思うが、その30人の質がこれまで以上に問われることになる。Jリーグで川崎が独走したように、「持てる者」と「持たない者」の格差が広がるかもしれない。ブンデスリーガ8連覇のバイエルン・ミュンヘンはさらに10年間優勝し続けてしまうかもしれない。

 5人交代だとベンチ入りの選手はJリーグが2020年に押し通した7人では足りない。少なくとも9人いなければ、4人目、5人目に戦術的な意味を込めることができない場合が出てくる。Jリーグがベンチ入り選手を5人から7人に増やしたときには、スタジアムのチーム用ベンチの対応が少し大変だったような記憶がある。今回も、そうした「ハード面」での課題も出てくるかもしれない。またクラブとしては、遠征費が増大し、「出場給」の増加もばかにならないものになるかもしれない。

 しかしサッカーの魅力が高まることは、最終的にはクラブとプレーヤーのプラスになる。今季のJリーグで見られたように、若手に出場チャンスが与えられ、成長をうながすだろう。「コロナ禍」という特殊状況下で「緊急避難」のように始められた「5人交代制」。それは選手の健康やチームのやりくりを助けるだけでなく、サッカー自体を変化させ、新たな魅力を生み、さらなる発展に向かわせるものになるのではないかと、私は思っている。

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