なにもかもが未曾有の事態だった2020年。Jでは史上空前の勢いで川崎フロンターレが駆け抜け、ACLに出場した3チームは苦い結末を迎えた。ピッチ上ではさまざまな変化があったが、変わらないこともあった。新たな星が日々生まれ、偉大なディエゴは逝ってしまった。サッカージャーナリストの大住良之、後藤健生の2人が、あらためて激動の1年を振り返る。
―今年は若い世代が急成長を遂げた年として記憶されそうです。
大住「言ってみればオリンピック世代の選手と、その下の世代の選手も含めて、伸びた年であったよね。12月22日からアンダー23候補のキャンプが行われて、チームの事情、たとえば天皇杯に出るとか、もしくはケガで候補に入っていない選手がいるけど、まだまだ、呼んでも良いんじゃないの、というような選手がたくさんいるからね」
後藤「アンダー19の招集メンバーを見ても、ほとんどがJリーグで試合に出ている選手だもんね。一時はU-20ワールドカップで日本が勝てないのは、ユースからトップに上がったことで、試合に出られなくなるからだと言われていたけど、いまじゃもうU-19なんて、当たり前にJ1の試合に出ているしね。
今年は特に交代が増えたんで、みんなが出られるようになったという面はあるけど、それだけじゃなくて、若い選手がどんどんJリーグに出られるようになっていっている」
大住「プレーだけ見ていると19歳なんだか20いくつなのかも分からないよね」
後藤「そうそう」
大住「みんなすごく堂々としているし、落ち着いているし。びくびくしているような選手は、ひとりもいない」
―それはなぜですか?
後藤「年齢で分けるという文化が昔はあったけど、それがだんだんと無くなってきているんでしょう。体育会の時代は、一学年違ったら全然違うような扱いだったからね」
大住「選手だってお互いを呼びあうのに、年上の選手に対しても、なんとか君って言っているもんね」
後藤「そうそう。今の子は平気だから」
大住「どこのチームもそうだと思うんだけど、試合中は“さん”づけで呼ばせないからね」
後藤「そうだよ。今年はよく聞こえたからわかるけど、目上の選手にも平気でやっているもんね」
大住「横浜FCでは19歳の選手でも、カズって呼ぶからね」
後藤「ハハハ」
大住「カズさん、なんて言っていたら、サッカーはできないから」
後藤「すごい話だな。息子どころではないよね。自分の父親より、はるかに上でしょ」