■「川崎は本当に進化している」

―川崎みたいなサッカーは見ていて面白かったですし、若いドリブラーが大ブレイクしたというのもあり、非常に記憶に残ったのではないでしょうか。

後藤「川崎は非常に進化したよね。以前はパスを繋ぐだけのようなサッカーをしていたんだけど、一発で裏を狙うようなプレーも上手くなったし。要するに、昔は中村憲剛がそれをすべて担っていて、ここでっていう時に一発でパスを出してすごいなって思っていたんだけど。あの中村憲剛が埋没してきたもんね。

 どこからでも一発でパスを出せて。本当にどうしてあそこの人たちは、あんなに上手くなるんだろうっていうほど。縦にスーッと良いパスを突けるしさ、若い選手がどんどん上手くなっていくよね」

大住「後藤さんが言ったように、同時多発テロじゃないけどさ、どこからどういう攻撃が始まっても良い、不思議なんだけど。山根視来なんかもすごかったし、三笘薫がパスのサッカーにすごく変化をつけているし、本当に進化していると思う」

―マネージメントも大成功だったんでしょうか?編成も含めて。

後藤「同じマネージメントをしようと思ったら、あれだけの選手がいなければ手も足も出ないわけで。やっぱり練習場で作ったものが大きいんだろうな」

―とすると鬼木達監督の手腕が大きいと?

後藤「だから風間八宏監督が作って、鬼木監督が運営しているチームを、どっちの評価ですればいいんだとなるけど。鬼木監督がしっかりマネージメントをして、しかも新しいものをどんどん植え付けているけどね。ちょうど、サンフレッチェ広島でミハイロ・ペトロヴィッチが新しいサッカーをやったんだけど、勝てないままに終わって、森保一が跡を継いで、4年間のうちに3回優勝したのと、また同じことが起きているわけだ」

大住「まあ、風間さんにしろ、ペトロヴィッチにしろ、ちょっと凝りに凝ったサッカーをやっていたからね。それをノーマルにさせることで勝ち始めちゃう。そういうことかもしれない」

後藤「だから風間さんや、ペトロヴィッチがいなくて、最初から、鬼木監督や森保監督がやっていたら、あんなチームになったかと言うと、それはそうじゃない。やっぱり前の人たちが素晴らしいものを作ったから、それにさらに上乗せをして、上手く運用をして勝てるチームにした、という事なんだろうなって」

―“美しいサッカーでは勝てない”というのが、この世界では定説になっている感がありますね。

大住「うーん、でも、今年の川崎は美しいサッカーだったよね」

後藤「美しくて、あれだけ点を取ったチームが、守備も素晴らしいというのがすごいよね。去年のマリノスのように、超攻撃的だけど穴があるな、とかならまだわかる。それが、あれだけ攻めて、点が取れるチームで、守備が本当にすごいんだもんね。相手のパスが来たら、すぐに人がワーって来て取り返しちゃうしさ。ここはいける、っていう時間には、前からプレスをかけて、キーパーのミスを誘い出すし。あの守備はすごいと思う」

大住「それも、5人交代が上手く活きた例だよね。前線からの運動量を落とさずにできたというのがある。それともうひとつラッキーだったのは、ゴールキーパーや守備ラインの重要な選手に故障があまりいなかった。たとえば谷口彰悟ジェジエウ、山根視来あたりは、ほとんどフルシーズンに出られたし、ゴールキーパーのチョン・ソンリョンも。

 それが大きかった。あそこでケガが重なったら、いろいろと苦しいことになっていたと思うんだよ」

後藤「だからケガ人を出さなかったということ自体が、大きく評価できるよね。無理をさせないでプレーをしているから、あるいは、なにかそういうトレーニングをしていたか。ケガ人には運不運というのもあるけど、やっぱりシーズンを通してケガ人を出さなかったというのは、原因や理由がある。そこはやっぱり高く評価すべきだよ」

大住「そうだね」

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