2020年ACL(AFCチャンピオンズリーグ)に初出場したヴィッセル神戸は、VARでゴール判定を覆されて準決勝の蔚山現代(ウルサン・ヒュンダイ)相手に力尽きた。いつか見た光景だ。またしてもアジアの大会で、VARが優勝の行方を左右する介入を行った――。
■AFC主催の大会に多いVAR決着
「またも」、である。
はっきりさせておくが、僕は蔚山の優勝をくさすつもりはまったくない。蔚山は東アジア・グループの戦いの中では最強チームの一つだったし、最後まで真面目に真摯に正々堂々と戦った。しかも、決勝戦は遠い異国の地カタールで戦い抜いた末の試合であり、準決勝から中5日の間隔があったとしても、疲労の極にあったことは間違いない。母国イランで十分な調整をして、ほとんど時差のないカタールに乗り込んできたペルセポリスと比べてコンディション的に不利な状況だった。
実際、立ち上がりこそ前からのプレッシャーで優勢に試合を進めた蔚山だったが、時間の経過とともに足が止まって、前半の最後の時間帯以降は押し込まれる時間が長くなったが、それでも最後まで走り切って戦った。
そういえば、水原三星(スウォン・サムスン)もヴィッセル神戸と対戦した準々決勝では、退場で10人に減った中、延長戦まで走り切った。2020年のACLでは韓国勢の頑張りは特筆すべきものだった。
11月1日で国内リーグが終了し、ACLに向けて調整してきた韓国勢と、厳しい日程の国内リーグを戦ってきた(帰国後にさらに試合が待っていた)日本勢とを比べれば、コンディション面で韓国が有利だったことも間違いないが、それにしても2020年大会では韓国勢の優勝は妥当な結果だった。
だが、蔚山のプレーの評価はまったく別の問題として、AFC主催の大会では「VARによって勝敗が決まる試合があまりに多すぎる」ということは言える。今回のACLだけではない。2019年1月のアジアカップもそうだったし、2020年1月のU23選手権もそうだった。
神戸のサポーターの納得できない気持ちはこれからも残るだろうし、もちろんペルセポリス側にも大きな不満が残ったに違いない。さらに、中立的なサッカー・ファンにとっても、あのような勝負の決まり方が繰り返されたとしたら、気持ちがシラけてしまう。アジアのサッカーの将来にとっても悪い影響があるのではなかろうか……。