バルセロナスペイン代表の大成功から世界的に流行したパスサッカーは、エンターテインメントとしてもわかりやすく面白かった。それに対抗するハイプレス・ショートカウンターの台頭によってその時代は終わったが、こちらは面白さよりも凄みを感じるものだ。行われていることのレベルは非常に高いのだが、見る側からすれば、得点が生まれない限り、締まった好試合と膠着していてつまらない試合は似通ってしまいやすい。

 戦術の応酬でサッカーは進歩してきた。流行りの移り変わりは時代が進むにつれて短いスパンになり、その内容もどんどん複合的な高度なものになっている。ショートカウンター+ハイプレスのいわゆる『ストーミング』に『ポジショナルプレー』も加わっている現在の戦術トレンドは、チーム全体でのプレーとしても、求められるアスリート能力としても、サッカーが行き着くところまで辿り着いたのではないかとさえ思える。

 今回のマンチェスターダービーのような試合になった時、相手のミス以外でどうすれば勝利を手にすることが出来るのかを考えると、チームの一部として活躍してくれる優れた選手の域を超えた圧倒的な個を持つイレギュラーな存在がいなければ不可能なのかもしれない、と思ってしまう。
それでも、これまでの歴史がそうであったように、必ず次の流行が生まれる。

 この試合で、互いに相手への対策を見事にしてきた両監督は、次回のマンチェスターダービーでここからどう進化した試合を見せてくれるだろうか。今後の戦術トレンドの移り変わりを予感させるであろう次戦は、3か月後だ。

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