■プロもアマも堂々と喫煙

 そうした時代だったから、サッカー選手たちも平気で喫煙していた。日本サッカーリーグ(JSL)時代には、多くの選手が、量の多寡はあったかもしれないが、タバコを吸っていた。吸わない選手のほうが少なかったかもしれない。会社に行けば周囲はみんな吸っているし、仕方がなかったのかもしれない。普段は吸わなくても、飲み会に行けば吸わざるをえなかった人もいただろう。あるいはまた、学生時代の友人のご母堂が言うように、仕事上で必要だったのかもしれない。

 しかし当時の私は、「プロ」は違うだろうと思っていた。欧州のプロ選手は競技のために厳しく日常生活を律していると聞いてたからだ。1968年に岡野俊一郎さんが書いた『サッカーのすすめ』(講談社)という本には、西ドイツ代表のカールハインツ・シュネリンガーが「早くアマチュアにもどりたい」と岡野さんにもらしたという話が紹介されていた。「プロはたしかにいいお金にはなる。けれども(中略)実際の生活というものは、ものすごい摂生を要求される」。

 しかしそうした時代にも、プロ選手たちは堂々と喫煙していたのだ。少なくともイングランドでは。ちなみに、ジャッキー・チャールトンがリーズ・ユナイテッドで活躍したのは1952年から1973年、実に21シーズンにもわたっている。

 選手の話から少し離れる。監督たちに目を向ければ、「喫煙監督」は非常に多かった。かつては試合中のベンチ内は禁煙ではなく、控え選手たちを横に置いて監督たちは堂々とタバコをふかしていた。日本のサッカーがいつ「ベンチ内禁煙」になったのか、よく覚えていないが、Jリーグ時代になる少し前のことだったのではないか。

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