東京Vの18歳“強いMF”藤田譲瑠チマ(1)J2で戦い抜くタフさとしなやかな「レジリエンス」の画像
東京ヴェルディの36番 藤田譲瑠チマ 写真:長田洋平/アフロスポーツ

「譲瑠」と書いて、“ジョエル”と読む。18歳にして、東京ヴェルディでトップ昇格を果たし、アンカーに抜擢されるや、定位置をつかんでみせた。すなわち、大器である。めざましい成長を続ける、そのプレーぶりをぜひ知っていただきたく、ここにご紹介する――。

■J2のゲームに森保代表監督の姿が

 オーストリアでの強化試合に向けて日本代表の招集メンバー発表を翌日に控えた11月4日、東京・味の素フィールド西が丘のスタンドには視察に訪れた森保一監督の姿があった。J2リーグ第31節の東京ヴェルディ対ツエーゲン金沢の試合である。

 東京VがJ2の11位、金沢は14位という順位で、けっして“好カード”ではないが、オーストリアへ向けて出発直前のこの時期にも森保監督は熱心に“現場”に足を運んでいるようである。おそらく、多忙のために都内で行われたこの試合を選択したのではあろうが……。

 森保監督がこのゲームに足を運んだ理由が何だったのかはともかく、少なくともこの試合で最も目についたが東京VのMF藤田譲瑠チマであったことだけは間違いない。

 試合は2対2の引き分けだった。

 東京Vは、永井秀樹監督がパスをつないで素早くボールを運ぶ攻撃的なチームを作っており、良い内容の試合はしているのだが、得点力が足りずに中位に低迷している。

 トップの人材が足りないのが原因だ。

 今シーズンは主に端戸仁がワントップで起用されている。端戸自身はたしかに良い選手なのだが、縦横に動きながらテクニックを使うタイプの選手であって、ワントップのポジションでストライキング能力を発揮したり、ターゲットとしてつぶれ役をこなすような選手ではない。どちらかと言えば、サイドアタッカーとして起用したい選手だ。

 東京Vが攻撃の形を作ることには成功しながら得点が増えないのはそのあたりが原因のような気がする。

 対する金沢の方はいかにも柳下正明監督のチームらしく、全員がハードワークを厭わない。そして、ツートップに山根永遠加藤陸次樹という優れたツートップがいるので、シンプルなロングボールを使うことによって攻撃が成立する(もしも、金沢のツートップのどちらかが東京Vにいたら、東京Vは上位に食い込めているかもしれない……)。

 さて、試合は29分にFKからのロングボールを加藤がヘディングで押し込んで金沢が先制すると、39分には東京Vの佐藤優平が右サイドの角度のないところから蹴り込んで同点とし、後半に入って58分には佐藤が、今度は正面から右下隅にミドルシュートを決めて東京Vが一時は逆転。しかし、68分に金沢の島津頼盛が右からの大きなクロスを決めて再び同点とし、結局、そのまま2対2の引き分けに終わった。「2対2」というスコアは試合内容を反映する正当なものだった。

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