■新たな招集は奥川雅也(ザルツブルク)だけ

 さて、発表されたリストを見て少し驚いたのは、招集メンバーが前回の10月の活動とほとんど同じだったことだ。

 メンバー発表の時点で10月に参加なかった選手で今回招集されたのは長友佑都橋本拳人、そして浅野拓磨の3人だったが、長友は前回も招集リストには入っており、体調不良のために合流できなかっただけだ。そして、セルビアのパルティザン所属の浅野とロシアのロストフ所属の橋本は新型コロナウイルスの影響でオランダに入国できなかったために招集を断念した選手たちだ。つまり、3人とも10月の段階から森保一監督のリストに入っていたのだ。

 一方、10月のメンバーから大迫勇也が抜けたが、これも帰国後に隔離が求められるといったクラブの事情を考えて招集を見送っただけで、当然のことながら大迫が森保監督の構想から外れたわけではない。

 メンバー発表の後、クラブ事情によって不参加が決まった堂安律に代わって、先日バイエルン・ミュンヘン相手にゴールを決めて話題となったばかりの奥川雅也(ザルツブルク)が追加招集された。つまり、11月の活動で新たに招集されたのは実質的に奥川だけということになった。(※編集部注 ザルツブルクで6選手に新型コロナウイルス陽性反応が確認されたことから、11月10日に招集の見送りを日本サッカー協会が発表)

 チームのメンバーはいずれ固定させなければならない。

 たとえば、ワールドカップまであと3か月で「本番前に集まれるのはこれが最後」という段階だったら、メンバーは固定されているべきだ。もちろん、負傷などの不可抗力はあるだろうが、その段階ではできるだけメンバーはいじりたくない。

 だが、2020年11月といえば、日本代表が目指しているワールドカップ・カタール大会までちょうど2年という時期である。普通に考えれば、メンバーを固定するには早すぎる。

 この時期に早々にメンバーが固定され、そのメンバーでチーム作りが順調に進んだとすると、チームの完成が早くなりすぎてしまう。あまりに早い時期にチームが完成してしまうと、その後は新しいものを付け加えることができず、チーム力を“維持”することだけが活動の目的となり、チームはマンネリ状態に陥って結束力を失ってしまう。

 2002年の日韓大会を目指したフィリップ・トルシエ監督の日本代表も、2014年大会のブラジル大会を目指したアルベルト・ザッケローニ監督の日本代表も強化は順調に進んで、ワールドカップ本番の前年秋ごろにはチームは完成してしまっていた。

 トルシエのチームなら埼玉スタジアムでイタリアと引き分けたあたりがピークで、2002年に入るとマンネリ防止のためにチームをいじることになってしまった。ザッケローニ監督のチームの場合は2013年の秋にオランダやベルギーと戦った親善試合あたりがピークだったのではないか。そして、最後の半年間で勢いを失ってしまったような印象が強い。

 皮肉なことに、日本代表がワールドカップで好成績を収めたのは、親善試合での完敗が続いて悲観論が渦巻き、開幕直前にメンバーやコンセプトを変更して戦った2010年の南アフリカ大会だったり、大会3か月前に監督が交代して新監督の下での準備がほとんどできないまま臨んだ2018年のロシア大会だったりするのだ。

 どちらも、“危機感”がチームに結束をもたらした。

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