■サッカー用には軍手だった
私のチームを見渡しても、実にさまざまな手袋をつけている。私はどこか北欧の国で見つけてきたアディダスのマークのはいった(アディダス製かどうかは不問)フリース製の黒色の手袋を愛用しているが、赤い手袋、青い手袋、しま模様の手袋、実にさまざまで、練習中に体温が上がってそのあたりに放り出してしまっても、練習後には、誰のものか、すぐにわかる。共通するのは、手のひらと指の内側にゴムのイボイボがついていることだ。スローインのときにボールがすっぽ抜けないようになっているのだ。
私の中学・高校時代には軍手だった。色は白、木綿のメリヤス織の手袋で、手首のところが赤や黄色の糸で縁取られている。当時も安かったが、いまならダイソーに行けば3組100円(税別)程度だ。私の学校のグラウンドは黒土で、冬場は霜解けで半ばどろんこだった。中学時代からは革の黒い手袋が通学用だったから、そんな高額なものをどろんこにするわけにはいかず、サッカー用にはどうしても別の手袋が必要だったのだ。
軍手は、明治初期に軍隊で大量に手袋が必要になって開発されたものらしい。しかも寒さよけというより、鉄砲を素手で触るとさびやすくなるために手袋が必要になったという。しかし指先まで全自動で編む機械が発明され、手首のところにはゴムを編み込んで、現在のように安価になったのは、戦後、それも1960年代のことらしい。私の高校時代は、そうして手軽に手に入れられるようになったばかりの軍手を使っていたことになる。
汚れたら左右取り替えて使えるようにするためかどうか、軍手には右も左もなかった。片方をなくしてしまっても問題はなかった。手袋の数え方で「一組、二組」というのは、こうした違いのない一対を数えるときに適した言葉で、右手用、左手用がある手袋には、本来、使われないという。