■印象に残ったのは70分の守備
もっともこの試合でいちばん印象に残ったプレーは、クリスへのアシストではない。70分に見せた守備が、筆者の記憶に強く残った。
柏は後半開始直後に2点目の奪いながら、3分後に失点。1点差に追い上げられ、その後、劣勢の時間が続く。
ディエゴ・オリヴェイラを投入した東京に押し込まれ、柏は自陣から出られなくなった。最終ラインは下がり、クリアボールをことごとく拾われて猛攻にさらされる。
ネルシーニョ監督は右サイドバックを交代して、ディエゴの出足を止めようとしたが、流れを変えるには至らなかった。
東京が追いつくのは時間の問題。
そんな空気が漂い始めた70分、オルンガが動く。
それまで最前線でチャンスを待っていたストライカーが、ドリブルを仕掛けるディエゴを背後から激しく追い立て、自陣深くで引き倒したのだ。
やがて流れは変わる。
劣勢を見かねたネルシーニョ監督が、オルンガのファウルから3分後に2枚替えを決行。その2分後にオルンガークリスのホットラインから、決定的な3点目が生まれた。
オルンガの守りが、果たして流れを変えたのか。それはわからない。
ただファウルとなったこのプレーに、私はグッときた。自らの持ち場を捨て、チームメイトを助けに駆けつける、その心意気に心を揺さぶられたのだ。記者席から見ていてそう思うのだから、チームメイトも奮い立つものがあったのではないだろうか。