■ネルシーニョ監督の柏は「ひと肌脱いでやる」の精神が強い

 日本のサッカージャーナリズムでは、いつからかカタカナの難解な専門用語が飛び交うようになった。

 海外でもそういうものだと思う人は多いようだが、そうでもない。南米やイタリアあたりに色濃く漂っているのだが、友情とか団結とか、そういった古くさい文脈が大事にされている国は多いのだ。

 仲間がひどいファウルを受けたら、チームメイトが相手のエースを削り返す。仲間が相手の攻撃に苦しんでいたら、オルンガがやったように、自分の持ち場を離れてでも仲間を救いに駆けつける。そういったことだ。

 私はかつて、マラドーナの日本版自伝の編集にたずさわったことがあるが、彼のサッカー観の核をなすのがこうした仲間意識、絆である。

 マラドーナはいつもチームのことを「軍団」と呼ぶ。彼にとって試合というのは、気心の知れたダチと一緒に戦地に赴くというニュアンスなのだろう。ちょっと任侠めいたところがある。

 もちろんサッカーは戦争や出入りではないが、仲間意識はとても大事だ。

「あいつがやられたら、俺が助けてやる」

「あいつのためにひと肌脱いでやる」

 こういう心意気を口先ではなく、プレーで表現できる選手が多いほど、そのチームは厳しい戦いを乗り越えることができるだろう。

 私は第一期政権のころから、ネルシーニョ監督の柏を見続けているが、それは彼のチームがこうした文脈を大切にしているのが伝わってくるからだ。

 ネルシーニョの柏は一発勝負に滅法強く、12年にスーパーカップと天皇杯、13年にナビスコカップ、14年にスルガ銀行チャンピオンシップと4つのカップを獲得した。これもまた、恐らくは「軍団」精神の賜物。1週間後に迫ったルヴァンカップ決勝でも、存分に堪能できそうだ。

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