■急成長を遂げた永井謙佑(FC東京)
そんなことを考えながら、コートジボワール戦の翌日、僕は味の素スタジアムに向かった。J1リーグ第22節のFC東京対清水エスパルスの試合を見るためである。日本代表関連の仕事が立て込んでいたおかげでかなり寝不足だった僕の眠気を覚ましてくれたのは、55分の永井謙佑のゴールだった。
小川諒也が相手ペナルティーエリア内に入れた縦パスに俊足を飛ばして追いついた永井は、そこで軽やかなステップを踏んで反転した。そして、一瞬タメを作ることによってマークに戻ったDFのヴァウドを外して、ゴール左上隅に叩き込んだのだ。
反転した瞬間に慌ててシュートを撃っていたら、シュートコースのコントロールが難しかっただろうし、目の前に立ちはだかったヴァウドに当たっていたはずだ。だが、タメを作ってタイミングを遅らせた結果、ヴァウドの位置がズレたためにぽっかりとシュートコースが生まれ、永井はそのコースをしっかりと狙って落ち着いて射貫いたのだ。
清水戦では前半40分にも永井は決定機をつかんでいた。高萩洋次郎からのパスを追ってヴァウドとの競走に走り勝って、そのまま俊足を飛ばしてゴールに迫り、逆サイドを狙ってグラウンダーのシュートを放ったのだ。GKの梅田透吾が指先でコースを変えてCKとなったが、これも永井らしいプレーだった。
永井の足が速いのは、彼がまだ福岡大学の学生だった頃から誰でも知っている事実だった。
だが、若いころの永井は抜け出した後の落ち着きが足りなかった。慌ててシュートを撃って大きく外してしまったり、シュートのタイミングを逸してしまったり、あるいはクロスを入れても「ボールの行方はボールに聴いてください」とでもいうような雑なプレーが多かった。
だが、ここ1、2年、永井はボールに追いついてからも落ち着いてプレーできるようになっている。