■より根本的な課題は「守備」
もちろん、1試合だけでは判断できないことは多い。
今シーズンのJ2は中2日か中3日での5連戦をひと区切りに、試合が消化されていく。遠藤のプレースタイルは効率的だが、40歳の肉体が異例の過密日程にどこまで耐えられるか。
J2にもハイプレスを仕掛けてくるチームがある。ギラヴァンツ北九州と栃木SCは前線からの追い込みが激しく、首位を快走する徳島ヴォルティスもハイプレスとミドルゾーンからの守備を併用する。ボール保持率でズバ抜ける東京ヴェルディも、ボールを失った瞬間から守備をする。
そうしたチームを相手にしても、ショートパスを中心としたビルドアップで対抗していくのか。鈴木政一監督の就任後は3バックの中央を任されている今野泰幸、左CBの伊藤らは、中長距離のパスを繰り出せる。彼らのロングフィードはハイプレス回避の手立てとなり得るなかで、遠藤を中心としたビルドアップとの適正バランスを見つけられるかどうかは、今後のポイントになってくる。
より根本的な課題を言えば、今シーズンの磐田は攻撃ではなく守備に苦しんできた。
加入1年目のアルゼンチン人CBフォルリンが、ケガなどの影響で1試合も出場できていないのは大きな誤算で、8月に横浜F・マリノスから山本義道を期限付き移籍で獲得したものの、守備が改善されたとは言い難い。25節までのクリーンシートは6試合にとどまる。首位の徳島の11試合、2位のアビスパ福岡の12試合に遠く及ばない。そして、経験を持つ選手が多いにもかかわらず、守備の安定感を欠いたことがJ1昇格争いで後れを取った最大の要因と言っていい。
遠藤にボールが集まるのは、対戦相手にも分かりやすい。背番号50を着けるベテランにプレッシャーをかけ、奪ったボールをショートカウンターにつなげる攻撃を、どのチームも攻撃の狙いに加えてくるのは明らかだ。
その意味でも、守備の安定が問われていく。コロナ禍では国外から外国籍選手を連れてくるのは難しく、国内市場から人材を確保するのも難しい。シーズンのスタート時の編成が、いまさらながら悔やまれるのではないか。