■サポーターたちからの申し出
この「復旧期間」で、松本さんには忘れられないことがある。ことし3月中旬、浦和レッズのサポーターが自主的にボランティアを申し出、残っていた作業の一端を担ってくれたことだ。
「松本さん、試合もなくなって、仲間にも会えないし、俺たちやることなくて死んじゃうよ」
実は2019年の11月、AFCチャンピオンズリーグの決勝戦を前に、サポーターが「部屋を貸してほしい」と連絡してきた。決勝戦で使う旗を1000本つくりたいのだが、いつもこうした作業で借りる埼スタが使えないので、レッズランドを借りられないかというのだ。松本さんは気軽に「いいよ」と返事をし、コーヒーを用意して待っていた。しかし当日集まったサポーターの仕事ぶりを見て、松本さんは舌を巻いた。布地とミシン、ハサミなどを持ち込み、リーダーの指揮の下、整然と作業が行われたのだ。まるで縫製工場のようだった。
「あのときのお礼にさ、何か手伝えることないかな?」
新型コロナウイルスによる営業停止期間であることで、松本さんは受けていいのか悩んだ。しかしこのころの松本さんは、施設のいちばん西にあるデイキャンプエリアとアグリフィールドの外側の「外周道路」にたまったままの土砂をどうするか、悩んでいた。グラウンドの復旧に比べ優先順位は低いが、どうするか、頭を離れたことはなかった。悩んだ末に、「屋外の作業だし、せっかくの厚意を受け止めなければならない」と、申し出を受けることにした。サポーターは、「10人ぐらいで行きますから、密にはなりませんよ」と請け合った。