昨年10月に日本列島を襲った台風19号は多くの人々の生活に深い爪痕を残した。荒川の河川敷に広がる浦和レッズの総合スポーツ施設、レッズランドもゴールポストをはるかに超えるほどに冠水し、水が引いた後も、埼玉スタジアム3個分の広大な敷地を汚泥が覆いつくしていた。多くの人びとの強い意志によって復旧を果たすまでの道のりを詳細にレポートする――。
■新型コロナウイルスを乗り越えて
だが3月はじめ、新たな「敵」が襲ってきた。新型コロナウイルスである。レッズランドは近くにあるさいたま市の浦和西体育館の指定管理業務を請け負っていたが、市はウイルスの感染防止のため3月からの営業を停止にした。レッズランドだけ営業を続けるのは無理があるということになり、レッズランドも営業を停止。2月21日に開幕したことしのJリーグも、第1節を終えたところで中断を決めていたため、違和感はなかった。
新型コロナウイルスによる工事の遅れはほとんどなかった。しかし本格的な営業再開には、思いがけなく時間がかかった。国による緊急事態宣言が解除されたのが5月25日。6月からはアカデミーとレディ-スのトレーニングが再開されたが、感染防止対策などのため一般への貸し出し準備に時間がかかり、サッカーグラウンドを含むスポーツ施設の貸し出しは7月となった。
感染防止のためクラブハウスの更衣室やシャワーは使えず、昨年までスポーツ施設の中央に立っていたプレハブの管理棟も、国土交通省の指導で再建できなかったため、使用者は不自由になったはずだ。しかし再開を待ちかねるように、使用の予約が殺到した。まだ夜間営業をしていないために使用できる時間は減ったはずだが、ことし8月の利用者は夜間営業をしていた昨年8月よりも増えているという。週末になると、6面のサッカーグラウンドやフットサル場、そしてミニサッカー場など、サッカーを楽しむ人びとでいっぱいになる。もちろん、広大な施設なので、「密」ではない。
こうして、レッズランドは蘇った。