「川崎フロンターレはパス・サッカーの究極形である」スポーツ比較解剖学(2)FCバルセロナを超えた川崎Fの画像
川崎フロンターレMF守田英正 写真:中地拓也

※第1回はこちらから

パスをつなぎ、シュートを放って、相手ゴールを陥れるスポーツ――水球、バスケット、ハンドボール、アイスホッケーを、パスを主体に考察し、比較を試みる。その本質をサッカーに当てはめると、川崎フロンターレはなぜ強いのか、その理由が見えてきた。

■「ティキタカ」の本質とは

 言い方を変えれば、サッカーでは必ずしも水球並みにパス精度を上げる必要はないということになる。

 しかし、20年前、水球を見ながら、僕は「サッカーでもあれくらいパス精度を上げて、パスの受け手のどちらの足で、どのような向きでパスを受けるかを意識しながらプレーすべきではないか」とも思ったのだ。

 その後、FCバルセロナの全盛時代が到来した。そして、世の中を魅了した「ティキタカ」と呼ばれる彼らのパスワークは「水球並み」とは言わないにしても、きわめて精度の高いものだった。

 精度の高いパスだから、シャビやアンドレス・イニエスタにとって大きなスペースなどは必要がない。相手のディフェンダーがいても、ほんの少しのパスコースさえ確保できればパスを通すことができる。ほんの1歩あるいは半歩動くことによって、小さなパスコースを作ればそれで十分なのだ。そうして、パスを回しながら相手の守備に穴やスペースが生まれた瞬間を狙って素早く動いてスペースを利用して相手の守備を崩してしまう。それが、バルセロナのサッカーだった。

 システムがどうとか、マークの関係がどうのといった戦術論とはまったく次元の違う話である。

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