J2リーグを席巻するギラヴァンツ北九州の強さは、2019年を起点とする改革に理由がある──。
9月19日に行われたアウェイでのモンテディオ山形戦も、エース・ディサロ・燦・シルヴァーノとDF岡村和哉のゴールで勝利を飾ったギラヴァンツ北九州。J2首位を走るクラブの代表取締役社長の玉井行人氏へのインタビュー前編では、小林伸二監督の招へいまでを聞いた。
後編は、北九州の人々の気質をもとに作ったギラヴァンツ北九州のフィロソフィーに則った彼らのサッカー、つまりは「最後まであきらめずに勇猛果敢に、自己犠牲を恐れずに徹底的に攻め続ける」スタイルが出来上がっていくプロセスに焦点を当てる。そのうえで、クラブの未来像も掘り起こしていく。
──ギラヴァンツのサッカーを観た人は、おそらく同じ感想を抱くでしょう。「走る、とにかく走る」と。
「2018年に私が社長に就任した当時は、ギラヴァンツは地元の支持率が低かったのです。その理由は弱いからではなく、後半の残り15分になると走れない、だから大きく蹴り出すサッカーをやっている、ということでした。“ギラヴァンツの試合を観るとストレスが溜まる、負けてもいいから全力で戦ってほしい”という声を聞きました。
それは北九州の人々のプライドに関わってきて、気質とも相反するので、とにかく“勇猛果敢に最後まで諦めないサッカー”を作ろうと。そのために小林監督が最初に手をつけたのは、フィジカルの改革でした。ケガ人を減らすこととフィジカルの基盤を作るために、優秀なフィジカルコーチを雇いました」
──科学的なトレーニングに着手していくのですね。
「19年シーズンが始動してすぐに、小林監督が“GPSを買います”と言ってきました。インタビューで選手たちを評して“小さい、飛べない、走れない”と表現していましたが、試合の最後まで走り切るだけの体力も筋力もない。筋力トレーニングをするにしても、まともに使えるマシンがほとんどなかったんです。
それも小林監督から指摘されて、営業部の社員たちと協力して3日で揃えましたね。カタログを作って、スポンサーを募って。普通に買うと高いですからね。選手たちの身体つきは、どんどん変わっていきましたよ。当時、体脂肪率が10パーセント以下の選手が少なかったのですが、いまはもうほとんどの選手が10パーセントを切っています」