■地元出身のリリー・フランキーとも共闘
──なるほど。いよいよJ1昇格は現実的な目標になってきています。
「そうですね。いろいろな苦しい時代があって、J3の最下位を経験して、小林さんが選手の心に火をつけてくれて、チームを再生してここまできました。小倉駅前のデパートが撤退したり、経済が疲弊したり、製鉄所が休止になったりと暗い話題が多いなかで、いま、ギラヴァンツの活躍は希望になっています。クラブが地域を動かしていくハブのひとつになるのが私の理想で、サッカーを軸に地域を活性化していくハブの役割が、少しずつ実現できているなと感じています」
──地域の公共財になっている印象ですね。
「社長に就任したときから言っているのは、非サッカー層の開拓です。いままでサッカーに触れていなかった人たちに、スタジアムに来てもらう、ファンになってもらう。そのために文化連盟へ行ってプレゼンをしたりもします。地元出身のリリー・フランキーさんにイラストを描き下ろしてもらってオリジナルのバンダナを作り、試合当日に来場者にプレゼントしたりもしています。他では手に入らないそういうものが欲しくて、スタジアムに来てくれる方もいます」
──地域の商店とコラボしたサービスなども展開しているのでしょうか?
「ミクニワールドスタジアム北九州の最寄り駅の小倉駅は、ターミナル駅で新幹線に加えて在来線が4本通っており、モノレールも入っていて、高速バスのターミナルも併設されています。これは絶対に生かさないといけなくて、以前から“サポートショップ”というものをやっていたんです。それは、たとえばユニフォームを着ているか、試合のチケットを持っていくと、サポートショップの飲食店で乾杯のビールが1杯無料になるといったサービスが受けられるものです。しかし、去年の年頭は30店だったので、現在までに協力店を370店まで増やしました」
──協力店で街が溢れていますね(笑)。
「スタジアムへ来た人たちは、小倉駅を通過して街へ出ていきます。試合の日は、街がユニフォームで溢れるんですよ。日本銀行の北九州支店がJ2昇格の経済効果を試算してくれたら6億円から10億円はあるとのことでした。それは結局、新型コロナウイルスの感染拡大でなくなってしまいましたが……。
チームが独自のサッカースタイルを確立していくことと同時に、街を変えていくのもギラヴァンツの仕事です。いろいろな取り組みをもっともっと進化させなきゃいけないと思っていて、仕込みを進めていますので、今後、皆さんがあっと驚くようなことを発表できるかもしれません。どこもやっていないことを、やろうとしていますので」
玉井 行人(たまい・ゆきと)
1957年7月、北九州市若松区生まれ。早稲田大学を卒業後、83年に西日本新聞社に入社。編集局社会部、東京報道部、久留米総局長などを経て、2012年から北九州本社副代表兼編集長、13~17年まで執行役員・北九州本社代表。18年1月から株式会社ギラヴァンツ北九州代表取締役に就任。