■アフガニスタンで戦った中村哲さんと共通の思い
──ギラヴァンツ北九州のフィロソフィーを具体的にお聞かせいただけますか。
「北九州はゼロから始まった街、炭鉱と製鉄で発展した街です。フロンティア精神と未知の世界に挑戦する気質に溢れ、人々は何事にもひたむきに真摯に取り組む。世界企業が多いのも、革新的な気質があることが関係していると思います。市内八幡西区の本社を置く安川電機さんは、石炭を地上に運び出すモーターの会社でしたが、いまやロボットの会社として世界にその名を轟かせている。小倉北区に本社を構えるTOTOさんも世界を舞台にしています」
──なるほど。
「北九州市を語るもうひとつのキーワードはボランティア精神です。北九州工業地帯の中核を担ってきたこの街で働く労働者の方々は、お互いに助け合う気持ちを抱いている。困った人を見捨てておけないのです。余談になりますが、昨年12月にアフガニスタンで亡くなった日本人医師の中村哲は、私のいとこです。彼は北九州で育ちました。彼に祖母の話を聞くと、いつも当然のように“人助けをしなければいけない”と話していたそうです」
──それは存じ上げませんでした。
「もうひとつは、北九州がいくつもの困難を乗り越えてきた街ということです。エネルギー革命で石炭がダメになって閉山する、失業者が出る、鉄冷えになる、深刻な公害が出る──そういった課題を諦めずに乗り越えてきました。
その諦めずに乗り越えるというエッセンスをもとにギラヴァンツのサッカーの世界観を作っていこうと。北九州の人がプライドを持てる、自分たちのDNAをギラヴァンツのサッカーに二重写しにして自信が持てる、誇りが持てるサッカーにしていきたいと思ったのです」