そして2019年4月28日の第9節のG大阪戦が、仙台にとっても永戸にとっても分岐点になった。渡辺監督が4バックへシステムを戻したのだ。そしてこのとき、永戸はJ1のリーグ戦で初めて左サイドバックを務めた。永戸は躍動した。左サイドの石原崇兆と連携して、クロスを上げた。3バックで磨いた守備も、4バックの左で輝いた。プロ初ゴールも決めた。令和の新時代を前にした平成最後のリーグ戦で、永戸は天職を得たのだ。

 その年、永戸はアシストを量産し、その数は「10」に達した。アシスト王になって、鹿島からオファーが来るまでに成長した。左ウイングバックで必要とされた攻撃を磨き、3バックで必要とされた守備を磨いたからこそ、4バックで輝いた。3つのポジションの経験が生きているのだ。

 鹿島に移籍する際、永戸の穴埋めには楽観論もあった。永戸のアシストは、流れの中からのものが少なく、セットプレー時によるものが大きかったことが原因だが、今期、その永戸を失った仙台は、左サイドバックの穴埋めに苦慮しながら、白星をつかめないでいる。数字以上に、その安心感がもたらすものが大きかったのだ。

 2月22日に2020年の開幕戦を名古屋と戦った仙台は、FC東京から2月19日に獲得した柳貴博を先発させている。その柳に加え、本来は2列目より前が本職の石原崇兆も併用し、9月9日の鹿島戦では、右サイドバックが本職の蜂須賀孝治を据えることが濃厚だ。

 永戸は、不振から抜け出せないでいる古巣を相手にどのようなプレーを披露するのか、永戸という安心を失った仙台は、永戸のプレーに何を思うのか。

 鹿島と仙台の1戦は、特別な試合となる。

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