■サッカーと野球の甘さの違い
「これ、甘いよ!」
私が監督をしている女子チームの練習中、そう言って選手が突然プレーを止め、ボールを外にけり出す。空気圧が少し低いというのだ。
「甘いボール」というと、多くの日本人男性は野球を思い出すようだ。ピッチャーが投げた球に厳しさがなく、打ちごろの速さやコースになってしまうことを言うのだが、サッカーでは、一般的に空気の入れ方が足りないときを「甘いボール」と言う。
私のチームでは、ボールはクラブで購入し、選手個々が1個ずつ保管するという方法をとっている。そのため、新しいボールをおろすと、チーム名とともに保管責任者の背番号を書く。入れる空気圧は0.9である。私が監督を始めたときには適当に勘で入れていたが、リーグの担当審判に話を聞くと「0.9気圧でやっている」とのことだったので、以後それに統一したのだ。
番号が書いてあるから「甘い」のは誰のボールかすぐにわかる。そのボールの「保管責任者」はすぐに練習を離れて空気圧をチェックし、本当に足りなければ空気を入れる。そしてその後また空気圧不足になれば、そのボールはそろそろ取り替え時ということになる。
手縫いボールの時代には縫い目が破れてダメになるケースが多かったが、貼り合わせのボールだとそうしたことはない。それでも、空気を入れるバルブに微小な石などが詰まると、少しずつ空気が抜けるようになり、なかなか修復できない。まだまだ使えそうなのだが、本当にもったいない。