2019ー20シーズンのチャンピオンズリーグが終幕した。
優勝したのはバイエルン・ミュンヘンだった。バイエルンにとって、クラブ史上6回目のビッグイヤー獲得だ。そして、バイエルンはブンデスリーガ、DFBポカール、チャンピオンズリーグと3冠を達成している。
一方、パリ・サンジェルマンが決勝に進出したという事実も無視できない。新興勢力として台頭してきたフランスの雄は近年のフットボールシーンを象徴する存在だったのだ。
■終わらない挑戦
世界一を目指す挑戦は、まだ終わらない。
「彼」がフットボールの世界で主役に躍り出たのは、2017年夏だった。「彼」とは、ネイマール・ジュニオール、その人である。
パリ・サンジェルマンが契約解除金2億2200万ユーロを支払い、ネイマールを獲得するーー。当初、バルセロナはその関心を意に介していなかった。そんな大金を準備できるはずがない。そう、高を括っていたのである。
だが世紀の移籍は瞬く間に実現した。弁護士を通じてLFP(スペインプロリーグ機構)に契約解除金が収められ、2017年8月に燦然と輝くエッフェル塔でネイマールのお披露目が行われる運びとなった。
ネイマールの移籍で、マーケットは完全に壊れてしまった。そういった意味で、彼は完全に主役だった。
最も影響を受けたのはバルセロナだ。ウスマン・デンベレ、フィリペ・コウチーニョ、アントワン・グリーズマンを獲得。その獲得資金は3億4500万ユーロ以上である。それだけではない。エルネスト・バルベルデ元監督、キケ・セティエン前監督、ロナルド・クーマン現監督と相次いで指揮官交代が行われた。
ネイマールの移籍がバルセロナに与えた打撃は計り知れない。ただ、これはバルセロナのクラブとしてのマネジメントの問題だ。ネイマールを裏切り者扱いするバルセロニスタの感情は理解できる。だが近年のバルセロナの不振はネイマール個人の決断に依るものではない。
2017年夏以降、移籍金の高騰は続いた。
キリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン/1億8000万ユーロ)、ジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリー/1億2700万ユーロ)、コウチーニョ(バルセロナ/1億2000万ユーロ)、グリーズマン(バルセロナ/1億2000万ユーロ)、クリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス/1億1200万ユーロ)、デンベレ(バルセロナ/1億500万ユーロ)、続々と大型移籍が決まった。
それまで、1億ユーロ超えは、2016年夏のポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド/1億500万ユーロ)、2013年夏のガレス・ベイル(レアル・マドリー/1億ユーロ)の移籍のみだった。
欧州のフットボールシーンはマネーゲームのパワーバランスに支配されるようになったのである。