■アタランタ快進撃の理由
ところが、2016年にジャン=ピエロ・ガスペリーニ監督が就任すると、2016/17年シーズンに4位と大躍進を遂げ、翌シーズンは7位に終わったものの、昨シーズンついにセリエA3位という成績を残したのだ。
「アタランタ・ベルガマスカ・カルチョ」。これが、アタランタの正式名称だ。
「ベルガマスカ」。つまり、本拠を置くのはロンバルディア州のやや山間に入ったベルガモ市。北部最大の都市ミラノから電車に乗れば30分。人口約12万人の小都市だ。インテルやミランが本拠としているミラノの人口が135万人、王者ユベントスのあるトリノは87万人だから、はるかに規模の小さな都市であり、旧市街は世界遺産にも登録されているという、坂道の多い風光明媚な小都市だ。
自転車のロードレースのグランツールの一つ、ジロ・ディタリアでもベルガモは数年に一度ゴール地点に設定されることがあるが、ゴール直前の旧市街の城壁に沿って進む上り坂はジロ・ディタリアの中で最も美しいコースの一つと言っていい。
アタランタがホーム・スタジアムとしているのは「スタディオ・アトレティ・アズーリ・ディターリア」(現在は命名権契約によって「GEWISSスタジアム」)。こちらも、収容2万1000人ほどの小さなスタジアムで、1928年に完成したスタジアムは設備も老朽化し、スタジアム環境があまり良くないと言われているイタリアの中でもやや見劣りがするものだった。
だが、このクラブには他のクラブにはない大きな強みがあった。それは、育成部門の充実だ。
クラブの下部組織から育った選手としては、古くは1982年のスペイン・ワールドカップでイタリアが優勝した時のキャプテンだったDFガエタノ・シレアがいたし、また元イタリア代表で代表監督も務めたMFのロベルト・ドナドーニも有名だ。最近の選手ではミランのキャプテンなどを務めたMFリッカルド・モントリーヴォ(すでに引退)、現在サンプドリアで吉田麻也とともにプレーしているFWマノロ・ガッビアディーニなどがアタランタの育成出身だ。
そのほか、他のビッグクラブから若い選手をレンタルして育てるという例も多く、たとえば、あのフィリッポ・インザーギが得点王となって初めて注目を集めたのもアタランタ時代のことだった。
さらに、マルチェロ・リッピ、チェーザレ・プランデッリなどの名監督たちが、若き日にセリエAでの経験を積んで成長していったことでも知られている。