大きな転換期に差し掛かっている、日本の女子サッカーの前途に大きな暗雲がたれこめてきたといえそうだ。なぜ、日本サッカー協会は女子ワールドカップ招致に失敗したのか。東京オリンピックを控えた“なでしこジャパン”にも大きな影響を及ぼすことになるだろう。
■腑に落ちない招致撤退の公式理由
日本サッカー協会が女子ワールドカップ招致からの“撤退”を発表したのは6月22日。FIFA理事会による開催国決定のわずか3日前というタイミングでの突然の発表だった。
2023年大会招致に立候補していたのは日本のほか、共同開催を目指すオーストラリア/ニュージーランドと南米のコロンビアの3つだった。南米からはブラジルも立候補していたのだが、6月8日に立候補を撤回。南米がコロンビアで一本化され、ヨーロッパ諸国もコロンビア支持で固まったためアジアも一本化が必要となり、AFCではオーストラリア/ニュージーランド支持が多数となった。日本には全く票が集まらないことが明らかとなったため、日本サッカー協会は惨敗を避けるために“撤退”を選択したのだ。
実際、FIFA理事会での投票では南米とヨーロッパの票がコロンビアに集まり、その他の大陸の支持によってオーストラリア/ニュージーランドでの共同開催に決まった。
招致撤退を決めた後、日本サッカー協会は撤退の理由を説明した「ステートメント」を発表したが、まず「ブラジルが立候補取り下げたことが、南米サッカー連盟の票の一本化につながった」と指摘。つまり、アジアの候補を一本化する必要があったという点が最初の理由として挙げられている。
アジア・サッカー連盟(AFC)からも圧力があったのだろう。オーストラリア/ニュージーランド開催が決まるとAFCのサルマン・ビン・イブラヒム・アルハリファ会長は間髪を入れずに日本に対する感謝の意を示す声明を発表した。
JFAの「ステートメント」では、東京オリンピックが1年延期されたため「女子サッカー最高峰を決める2つの大会が、短期間に同じ国で開催されることに対する抵抗感が強まったこと」も“撤退”の理由としている。
しかし、オリンピックが東京で開催されることは最初から分かっていたことであり、それが2020年であろうが、2021年であろうが本質的に大きな違いはないはずだ。また、男子の場合には同一国でオリンピックとワールドカップが連続して開かれたことは過去に何度もある(最近では、2014年のワールドカップを開いたブラジルは2016年にリオデジャネイロ・オリンピックを開催している)。従って、オリンピックの2年後に女子ワールドカップを日本で開くことが大きな問題になるとは思えない。