■集票活動に失敗した日本サッカー協会
さらに、「ステートメント」ではFIFAによる「評価報告書(Evaluation Report)で(中略)オーストラリア/ニュージーランドが日本を上回る評価を得たこと」も撤退の理由としている。
しかし、これまでの例を見ても「評価報告書」が大きな意味を持たないことは明らかだ。
2022年の男子ワールドカップ開催国選びでは「評価報告書」で最低スコアだったカタールが選ばれて問題になった。また、今回の報告書を読めば、オーストラリア/ニュージーランドの評価スコアは412ポイントであり、392ポイントの日本とは“僅差”だったのだ。もし、わずか20ポイント差がそれほど重要なのだとすれば、評価スコアが280.5のコロンビアが競争相手になるはずがない。
つまり、「ステートメント」の中でJFAが挙げている敗因は、いずれも“後付け”の理由としか言えないのだ。
日本はこれまでにも2002年ワールドカップなどのFIFA主催の大会を何度も開催した経験があり、しかも2023年大会はすべて既存のスタジアムを使って開催でき、それもほとんどがサッカー専用スタジアムという内容だった。そして、日本は3つの候補国の中で唯一、女子ワールドカップで優勝経験があった。
こうした優位に立つのに十分な条件があったにも関わらず支持を集められず、惨敗を避けるために“撤退”せざるをえなくなった真の理由は何だったのだろうか?
基本的には日本サッカー協会が集票活動に失敗したのが最大の原因だ。
かつて1990年代に日本はAFCにおけるFIFA理事選挙で苦杯をなめ続けてきた負の歴史がある。2002年ワールドカップ招致争いでも、プロの政治家でもあった韓国の鄭夢準(チョン・モンジュン)会長の選挙戦術に振り回された挙句、追い詰められて「共同開催」を飲むしかなくなってしまった。
それから時間が経ち、日本代表チームは男女ともに世界大会で存在感を示すようになってきている。また、アジア各国に指導者を派遣するなどサポート活動も積み重ねてきてAFCにおける日本の影響力も高まっていたはずだった。だが、女子ワールドカップ招致争いで、日本は票集めがまったくできなかったのだ。
この20年余りの日本の活動はいったい何だったのだ?