■険しくなった女子プロ・リーグ成功への道

 もう一つの敗因は、日本が6~7月開催案に固執したからだと言われている。

 女子ワールドカップはこれまで6~7月にかけて開催されていたが、FIFAは2023年大会は7~8月開催を目指していた。そして、オーストラリア/ニュージーランドはFIFAの意向に沿って7~8月開催案を提示したのに対して、日本は従来通りの6~7月開催を提案。今年2月にヨーロッパを訪問した田嶋幸三会長は「6~7月開催に戻すべきだ」と説明し、そのために7~8月の日本の猛暑や台風のことなどを説明したため、かえって日本の印象を悪くしてしまったと言われている

(ちなみに、この時のヨーロッパ訪問によって田嶋会長は新型コロナウイルスに感染してしまった)。

 FIFAが7~8月開催を希望したのは、アメリカのテレビ局の意向に沿ったものだったという。アメリカでは、4大スポーツのうちフットボール、バスケットボール、アイスホッケーが秋から翌春がシーズンで、夏場には野球(MLB)しか行われておらず、しかもMLBも山場のポストシーズンは秋に入ってからであり、夏場には注目のスポーツイベントが少ないのだ。

 夏季オリンピックが、本来はスポーツ活動には不向きなはずの7~8月の猛暑期に開催されるのがアメリカのテレビ・マネーのためであることは、東京オリンピックのマラソン競技の札幌移転問題で明らかになった通りだ。アメリカのテレビ局が提示する高額な放映権料の前には、国際オリンピック委員会(IOC)もFIFAも抗しきれないのである。

 もちろん、純粋にスポーツ的に考えれば「猛暑期を避けるべき」というのは正論なのだろうが、FIFAの意向を考えれば、日本開催を勝ち取るためには7~8月開催を受け入れざるを得なかったはずだ。このあたりは、日本協会の情報収集能力の問題であり、戦術的なミスだ。田嶋幸三会長は2015年以来FIFA理事の座にあるはずなのに、そのあたりの情報収集ができなかったのは何故なのだろうか?

 女子リーグのプロ化は田嶋会長が熱心に推し進めた事業だ。そして、それに伴って日本サッカー協会は2023年の女子ワールドカップ招致に動いたのだが、それに失敗したことで女子のプロ・リーグの成功への道は険しくなってしまった。

 女子ワールドカップ招致失敗については、これまであまり大きく報じられることもなく、JFAに対する批判の声も聞こえてこない(そのこと自体、女子サッカーに対する無関心の表われだ)。だが、今回の招致失敗は協会の、あるいは田嶋会長の“大失態”と言っていいだろう。

 ワールドカップ招致に失敗した以上、WEリーグを成功させるためには東京オリンピックもしくはオーストラリア/ニュージーランド開催が決まった2023年女子ワールドカップで代表チーム(なでしこジャパン)が世界一に返り咲くしかなくなったと言っていい。

「代表監督選び」から見直して、そのための万全の態勢作りをしてほしいものである。

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