■旧ユーゴ出身監督が持つ強みとは
こうしたチームのキャラクターを語るうえで無視できないのが9年ぶりの復帰となったランコ・ポポヴィッチ監督。
一切の妥協を許さない指導によって、昨季18位に低迷したチームを戦う集団に変えようとしている。
Jリーグには56人の監督がいるが、ポポヴィッチほどの熱血漢はいないだろう。90分間、休むことなく大声で檄を飛ばし、判定にも容赦なくクレームをつける。
町田の選手たちが最後の最後まで力を出し切ろうとするのは、だれよりも勝利にこだわる指揮官が、タッチライン際で一緒に戦っているからだ。
旧ユーゴスラビア出身のポポヴィッチは、過去Jリーグで4つのチームを指揮し、大分の立て直しや町田のJ2昇格、FC東京での攻撃サッカー確立など一定の成果を残してきた。
Jリーグでは、オシムやぺトロヴィッチ、ストイコビッチ、ベルデニックなど、旧ユーゴ出身の指導者が顕著な実績を残してきた。
彼らは日本に限らず、世界中で評価が高い。
彼らが異国の地で結果を出せるのは、次のような理由がある。
まず国が経済的に豊かではないため、国外に出ることを苦にしていない。異国の文化への適応が早く、外国語の習得にも長けている。
球技への適性の高さも挙げられる。
旧ユーゴは、サッカーはもちろん、バスケットボール、ハンドボール、水球といったボールを使ったチームスポーツが非常に強く、指導者たちは戦術のアップデートに余念がない。
多くの人が戦火を経験する中で、人生をサバイブする能力が非常に高い。そのことがゲームにおける駆け引きの上手さ、したたかさにもつながっている。
コソボ出身のポポヴィッチにも、こうした資質は当てはまる。
東京時代は攻撃的なスタイルを築いた彼は、戦力が限られた町田で、タフな守りを前面に押し出したやっかいなチームを創り上げようとしている。
上位陣にとって、町田との戦いは鬼門になりそうだ。