一方、FC東京の長谷川健太監督は前線の3人を総入れ替えするという形で5人交代制をうまく利用した。

 試合開始時には前線にスピードスターたちを並べて相手陣内の広大なスペースを狙わせたFC東京。PKを獲得した時に田川が負傷してレアンドロに交代したのに続いて、後半には永井に代えてアダイウトンを投入。レアンドロ、アダイウトンというスピードよりボールキープに優れた選手を並べることになった。つまり、FC東京の場合はシステム変更によってではなく、前線の選手の特徴の違いによって流れを変えようとしたのだ。

 2点リードの77分には、FWのディエゴ・オリヴェイラに変えてDFのジョアン・オマリを投入して5バックにして守り切ったFC東京。長谷川監督は、富山の安達監督や柏のネルシーニョ監督とは違ったやり方で5人交代制をうまく使ったのである。

 Jリーグ再開後、僕がたまたま生で観戦に出かけた5試合だけでも、それぞれのチームの監督が5人交代制を活用して戦った。そして、ある監督は成功し、別の監督は失敗した。いずれにしても、試合はこれまでになく変化に富んだものとなった。

 僕は試合中はいつもメモを取りながら観戦しているが、試合途中にシステム変更などがあると選手の並びやシステムを素早く見極めて新たにメモをしなければならなくなる。相手チームがそれに対応して何らかの変更を加えると、再びその変更をメモしなければならない。交代が5人までとなったことによって、試合中にメモをつけるための作業量はかなり増加したようで、試合を見ていて激しい疲労を感じることが多くなった。

 だが、「だからこそ」の面白さがあるのも事実である。「5人交代制」にはサッカーというスポーツの戦術的な広がりをもたらす効果があるのかもしれない。

 そうなると、大きな疑問が一つ生れることとなる。つまり、来シーズン以降も「5人交代制」を正式ルールとして認めるべきではないのかということである。

 もちろん、伝統主義者の立場からは「それはフットボールが持つ本来の楽しみとは違うものだ」という反対の声も聞こえてくる。

※後編に続く

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