■隣同士が助け合って好プレーが連鎖する
サッカーは往々にして、結果と内容が噛み合わないもの。
東京が勝った再開直後の一戦、内容で上回ったのは柏だった。
勝敗を分けたのは60分、ヒシャルジソンの退場。その流れから柏はコーナーキックを与え、手痛い失点を喫してしまう。
だが、11人で戦った60分までの出来は素晴らしかった。
クリスティアーノを故障で欠いたが、柏は終始ボールを支配し、敵陣で攻め続けた。サイドを上手く使いながら、チーム全体がテンポよくパスをつなぎ、敵陣へ押し上げていく。
主導権を握ることができたのは、役割分担がしっかりとできているからだ。
柏の指揮官ネルシーニョは、11人の役割分担をとても重視する。
それは「近所付き合い」と表現してもいい。
ネルシーニョは09年、柏を昇格即優勝に導いたが、当時のチームでも近所付き合いに基づいた役割分担が上手くいった。
わかりやすいのが、レアンドロ・ドミンゲスと酒井宏樹の近所付き合い。右MFのレアンドロがボールを持つと、ほとんど自動的に右SBの酒井がサポートに入る。プレーの選択肢を増やし、レアンドロの良さをさらに引き出すためだ。
隣同士が助け合うことで一人ひとりが楽になり、その結果として好プレーが連鎖する。
こうしたネルシーニョのエッセンスは、いまの柏にもしっかりと根づいている。
こうなったら、周りがこう動くという形が染みついているため、選手の動きに迷いがない。プレーが淀みなくつながるから、相手も的を絞れないのだ。
敗れはしたが、柏は質の高いゲームができることを印象づけた。
オルンガ、クリスティアーノというタレントがいて、同時に組織力にも優れる。昇格組とはいえ、優勝戦線に加わる力は十分にあるはずだ。