杉山氏が推す清水エスパルスの西村恭史選手(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

■南野拓実はパク・チソンになれるか!?

杉山  そうそう。そこで負けちゃったらどうしようってなるんだよね。でも僕らは、大丈夫だからやれ! って言いたい。ここで変えて負けてもいい。そうしないと、4試合目、5試合目はないんですよ。

 話がもどっちゃうけど、ロシアW杯のベルギー戦、2人同時に変えたのが後半36分ですよ。3人目は変えてない。それでロスタイムに勝ち越し弾を入れられちゃったんだよね。3人目はここで入れておけば、っていうタイミングで入れておけば、ハッキリ言ってあの逆転ゴールなかったんです。でもね、変えるメンバーがいなかったんですよ。それまでのストーリー的に……。変える選手が、もういなかった。本田圭祐と山口蛍入れて、あと入れるべきは岡崎慎司ぐらいしかいなかった。でもあそこは岡崎じゃないという感じでもあって、西野さんも誰を変えていいか分からなかったっていうわけ。俺もそう思ったんだけど、でも、それは素直すぎるよね。それじゃあ監督はダメなんだよって言いたかった。

――その試合のその場面に至るまでにチームとしての交代の“準備”をしておかなければならなかったということですか?

杉山  そうそう。作っておかなきゃいけない。1戦目、2戦目で。それがあって、3戦目、4戦目のベルギー戦。あの試合もしベルギーと2対2で引き分けて、PKで勝ったとする。そしたら、次の試合のメンバーはいませんでした。まったく。使い切っちゃっていた。だから、どこを目標にして戦っているのかは、すごい重要な話なんです。それは、国民の支持もないといけないけど、本気で東京オリンピックだと金メダルとろうとしたら、1戦目、2戦目、3戦目、全部変えないとダメだと思う。そこで使える選手を見極めて、さっき話した鈴木冬一みたいな、ユーティリティな選手をかみ合わせながら、準決勝、決勝に進むに従い、チームの総合力が上昇していくように設定しないとダメなんだよ。

戸塚  ベルギー戦に勝っても、たしかに次はなかったですね。

杉山  そうです。だから、目標がベスト8というのなら、最低5試合を戦う準備をしておかないと。トーナメントに入ってからさらにチームの力を引き上げることができるか。日本代表監督に課せられた使命なんです。これはある意味で、賭けであり、勝負なんだけど、でもその勝負ができる人じゃないと、日本をベスト8には導けないですね。

戸塚  見るべき選手でいうと、やはり南野拓実でしょうか。

杉山  チャンピオンズリーグ、対アトレティコ・マドリード戦の2戦目(3月11日、2-3でアトレティコの勝利)、最後出てきたよね。僕は、ちょっとクロップの南野評が高すぎるような気がするんだけど、でも彼にとってはすごい自信になるわけ。5分でもいいから、あの場で出たら。

戸塚  そこで使われるわけですから、クロップの評価は高いですよね。

杉山  本田圭佑がブレイクしたのも、チャンピオンズリーグの決勝トーナメント一回戦(2010年3月16日、セビージャ対CSKAモスクワ戦。1-2CSKAが勝利)、あそこで弾丸シュートのフリーキック決めた。あそこでガーンといったわけ。そういうキッカケってすごくあると思うんです。南野は今までは、代表でも中心という感じでもなかったじゃないですか。でもあのアトレティコ戦で出れたということは、今の実力以上の選手になれるというか、っていうか。代表でも顔のような選手、韓国で言うと、パク・チソンのような。

戸塚  そうですね。南野は年齢的にも、今がちょうど境目ぐらいじゃないですか。だから、このリバプールでキャリアの絶頂期をすごせるか、それとも、2シーズンぐらいいたものの、違うところにまた行ってしまうか、みたいな境目にいると思います。

杉山  香川真司になるか、パク・チソンになるか。

――突き抜けられるかどうかということですね。そうなると日本代表でも中心に。

戸塚  そう思います。攻撃の柱で、彼のチームになる。

杉山  本田がそうだったように、雰囲気が出ちゃうんですよ。自然と、自分が偉そうにしてなくてもそう見えちゃう。みんなが勝手にリスペクトしちゃうみたいになる。

戸塚  インテルにいたときの長友佑都みたいにね。あれはきっと内面からにじみ出る自信なんでしょうね。内面からにじみ出る自信が、堂々たる風格を漂わせることにつながるんじゃないかな。

杉山  久保建英にもそういうものが欲しいよね。今はまだないよね。やはりそれには、チャンピオンズリーグ。チャンピオンズリーグに出てくださいって話なんです。アトレティコ戦のあの場面で、南野が出てきたんですよ。僕でも、おー! みたいな感じになりましたよ。

 僕は、別に日本代表愛とか、南野愛とかはないけど、もし現地で見ていたら、多分すごい愛が生まれたと思う。僕は、個人の選手の方に対してのほうが愛を感じやすいんだよね。昔、チャンピオンズリーグに、フェイエノールトの小野伸二が出てきたときは、日本代表の試合よりも興奮したもんね。

戸塚  確かにそれはありますね。

杉山  そうそう。やっぱりチャンピオンズリーグの決勝は、W杯の決勝の舞台より重いんです。ワールドカップもすごいんだけどチャンピオンズリーグはそれ以上。決勝戦には、万国の国旗が飾られるんです。両チームに所属する選手の国籍の数だけ、ゆらめいてる。

 パク・チソンはマンチェスター・ユナイテッドのときにチャンピオンズリーグのタイトルを取ってますが、そこに韓国の旗が揺らめいていたりすると、無性に羨ましくなる。日本の国旗はないぞと。この晴れの舞台に、日の丸をなびかせたいって感じになるんですよ。

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