■ブスケツを彷彿させる清水の大型ボランチ
――では、最後に今年注目の選手を教えてください。
戸塚 Jリーグだと、横浜F・マリノスのチアゴ・マルチンス。あとはやはり、自分と世代が近いからか、ベテランにばかり目がいってしまうのですが、カズさん(三浦知良)見たいな、中村俊輔見たいなとか、中村憲剛早くケガから戻ってこないかなとか、考えてしまいますね。開幕戦を見ると、ああ遠藤保仁は良い仕事するんだなとか。そういうところばっかり見てしまってる自分がいますね。彼らは特別だから、仕方のないことなんでしょうが、本当にそれでいいのかっていう思いもありますね。
杉山 だから、そういう意味では、特に川崎フロンターレは、中村憲剛から脱しなきゃいけないと思いますよ。憲剛のサッカーから脱しないと、彼は川崎のサッカーそのものだけど、もうちょっと一回バラさないと川崎は苦しいような気がします。
――中村憲剛も40歳。ケガもありますしね。
杉山 若手で言うと、ルヴァンカップ(2月16日)で、清水が川崎に1対5で清水が負けたんだけど、その試合見ていて、多分Jの試合に出たの初めてだと思いますが、西村恭史という選手。僕は気に入っているんだよね。まだ二十歳の選手で。
戸塚 じゃあ、オリンピック世代ですね。
杉山 もう原稿に書いちゃいましたね。彼はボランチなんだけど、やたらセンスがいいんだよね。なんで今までこの人出てなかったんだろうっていうくらい。去年J2のファジアーノ岡山いたんだけど、1試合も出てないんだよ。それで、レンタルバックして、清水に戻ってきていきなり先発。監督がクラモフスキーだからだろうね。でもルヴァンカップは、若い選手、U-21以下の選手を無理やり出さなきゃいけないのかと思って、彼はだから出たのかなと思っていたの。でも、その割には上手いなって思っていた。そしたらJリーグ開幕戦でもまたスタメンだったから、ああ、これは年齢関係なく選んでいるなって。
ボランチなんだけど、高い位置で受けるのが上手い。スーって上がってって、隙間に入って、ヒュヒュヒュヒュ。良いところでボールを受ける感じ。これが、従来のボランチ像とはちょっと違うんですよ。少しブスケッツっぽいんだけど、背が高くて185センチくらいあって、横浜F・マリノスの扇原貴宏と若干被るんだけど、扇原よりスッと前に出ながら受けるのが上手いんだよ。
戸塚 そのサイズ感もいいですよね。
杉山 そうそう。それで視野が広いし、ウイングにも出てもプレーできるし。今までまったく話題になってなかったことが不思議な選手に見えた。
――やっぱり新監督(クラモフスキー)の就任が大きいのでしょか?
杉山 そうだと思います。まだ1試合だけだから、これからなんだけどね。
戸塚 オリンピック世代だと、湘南ベルマーレの鈴木冬一も注目だと思います。五輪のサッカーは、フィールドプレーヤーが16人じゃないですか。鈴木冬一はどこでもできるんですよ。左足がメインの選手で、今シーズンは左ウイングバックになりそうだけど。
杉山 守備的MFもやってるよね。
戸塚 そうです。あと、2シャドーもできるし、右もできるし、ものすごい汎用性が高い。右からのカットインとかもできる。
杉山 ポジションに縛りのない選手はすごい珍しいですよ。右サイドだったらイキイキできる選手は左になるとイキイキできない選手とか。真ん中イキイキできるけど、サイドに寄っちゃったら全然ダメだとか、そういうのいっぱいいるからね。
戸塚 多分この世代ではズバ抜けたユーティリティ性だと思います。
杉山 そういう選手がいないと、16人じゃ回せないよね。それで金メダル狙うって(笑)。
金メダルじゃなくても3決までとなると、マックスの6試合じゃないですか。この前のアジアカップもそうだけど、森保さん、西野さんもそうなんだけど、同じスタメンでいって、ドーンとメンバーを落として、また戻してってパターンなんですよ。だから、ロシアW杯のときも、1、2戦はほぼ同じで、3戦目で大きく変えた。えっ、こんな変えちゃうの!? って。目先の勝利が絶対欲しいものだから、ローテーションがうまくできないんですよ。アジアカップの森保さんも同じ。1戦目、2戦目がほとんど同じで、3戦目のウズベキスタン戦でメンバーをガラっと変えて、そこからどうイジってくのかなと思ったら、4戦目のスタメンは、1戦目にほぼ戻っちゃった。そうすると大会の後半になると、落ちてくることが見えているんです。準決勝はまだよかったんだけど、決勝はね……。
日本人の監督の一番良くない所は、目先の勝利にとらわれすぎちゃっう。逆算して戦えないんです。メンバーを落とさなきゃいけない試合は絶対あるんですよ。そこの落とし方のセンスや度胸が足りないというか。
戸塚 理屈は分かっているんですけど、慣れてないんですよね。