(承前)
スコットランド戦、幻想的な前半、リアリズムの後半
スコットランド戦。前半のジャパンの攻撃の美しさ。一方で後半終盤の両軍の肉体をぶつけ合った攻防。この対比が、この完勝を一層彩り豊かなものにしてくれた。
先制を許したジャパン。まず18分、右ウィングの松島幸太郎が左サイドに移動し、左サイドの福岡堅樹との連携で崩し切って同点とする。格段の瞬発力を誇る両翼のスターが同サイドに張ることでの見事な崩しだった。
さらに、27分、幾度も左右にゆさぶり、堀江翔太、ジェームス・ムーア、ウィリアム・トゥポゥの3連続オフロードパスから最後に稲垣啓太がトライし逆転。フッカー、ロック、フルバック、プロップとつないでの中央突破だったから、まさにパスラグビーの真骨頂。
加えて、前半終了間際。神業とも思える連続個人技から、もうワントライを奪う。ラファエレがスコットランド守備ラインの後方に狙いすましたグラウンダーのキック、福岡が飛び切りの運動能力でそのパスを受けて突き放す。福岡のスピードを信頼しきったラファエレのねらい、ラファエレのパス能力を信頼しきった福岡の前進。
3トライとも、技術と判断が高度に結びついた美しいトライだった。全選手の生真面目な運動量でポゼッションを確保。いずれの選手の技巧も確かで、すばやいパスワークで揺さぶる。そして、松島と福岡がしとめる。夢のような前半戦だった。
後半開始早々、自陣の混戦から敵ボールをもぎとった福岡が長駆独走し、3トライ差とする。ところが、ここからスコットランドが驚異的な反発を見せてきた。(後述するが)ジャパンのミスをついて連続トライ。7点差とされてしまう。
ここからの両軍のタフで冷静な戦いがすばらしかった。ジャパンは丹念にボールをつなぎスコットランド陣に攻め込む。けれども、疲労もあったのだろう、前半ほど変化あるパスワークが見られない。それならそれで、ジャパンは1つでもよいからペナルティが欲しいところだが、スコットランドの守備陣は我慢を重ね、不用意な反則を冒さない。
一方でスコットランドも攻め返し。しかし、ジャパン守備陣も、さすがにもうミスはしない。そして、得意の低いダブルタックルを連発し、前進を食い止める。ジャパンはこのままワントライ差を守り切り、歓喜のベスト8進出とあいなった。
前後半で、まったく異なるラグビーの魅力が楽しめた試合だった。ジャパンの華麗な攻撃を楽しんだ前半、私はトルシェ氏やザッケローニ氏が率いた好調時のサッカー日本代表を思い出した。そして、両軍のひたすらタフな戦いを堪能した後半、岡田氏やハリルホジッチ氏が率いたしぶとく勝ち点を稼ぐ日本代表を思い出した。サッカーでもラグビーでも、代表チームがうまく機能してくると、その国の「理想のフットボール」を演じることになると言うことだろうか。