――渡邉さんは、試合前のロッカールームに入ってくるのはイヤじゃないんですか?
渡邉 そもそもやっぱり、すごい、気にしてくれてるなっていうのをすごい感じてたので。それはもうほんと嬉しかったし。あと、メディアでの順位予想を上の方にして、それをちゃんと後で、「おい、ちゃんと上にしておいたからな」って、プレッシャーをかけてくる(笑)。
岩本 今年の俺の仙台の予想順位は14位だよ。ベガルタで2ケタにしたの初めてだよ(笑)。ずっと1ケタ順位にしてきたけど、今年は、ある主力選手も、キャンプでスゴい不安がっていたしね。
渡邉 順位のことは分からないけど、どんなチームでも“やろうとしていること”ってあるじゃないですか。実際にピッチで表現できなかったとしても、チームとしてトライしたことって言えばいいかな。テル君は、それを読み取るのがスゴい。だから、試合を見た後に、その試合内容を他の人がいろいろ言ったとしても、「本当はこうしたかったんだろ?」「できなかったけど、あのトライはいいよね」と言ってくれる。監督とすれば、それがすごい嬉しいですよね。
岩本 自分の考えをガーッとしゃべったり、批判するってこともできるんだけど、それはそもそも好きじゃない。それはサッカーの見方として面白くない。実際に見えてない部分もサッカーだから。
渡邉 確かに、ピッチでうまくいってなくても、「いや、意図としては多分こうしたいんです」っていうような発言をしてくれる。それが分かってくれてるから。最初にロッカーに来たときはビックリしたし、断れなかったけど(苦笑)。
岩本 同じ要領で他の監督のところに行ったら、みんなイライラピリピリしてるよ。めちゃめちゃ怖いから。でも、ナベ監督はすごい穏やかだよ。
渡邉 僕だって、ロッカーの中に来るのはテル君くらいだからね。代表スタッフだった誠さん(手倉森誠・ベガルタ仙台元監督)も、仙台に来たとしても扉のちょっと手前くらいまできて「おーい」って軽くあいさつするくらい。森保さん(森保一・ベガルタ仙台元キャプテン)は、気を遣ってまったく会わない。来てたのは知ってるから、逆に後から連絡する感じですかね。そうすると、「試合前の監督は忙しいから、ほんと気にしないで」って丁寧に言ってくれる。
岩本 今日、2人の写真撮ったらポイチ(森保一・ベガルタ仙台元キャプテン)に送ってみよう(笑)。
でも、試合のときの監督って忙しくないでしょ?
――えーッ! そんなことないですよね?
渡邉 いやいや、本当に、やることはあまりないですよ。試合直前で何か新しいことを言っても、練習もしないで、そこでうまくやれることなんて本来はないじゃないですか。だって、もともとのゲームプランがあって、メンバーが決まって、18人を提出している。その18人は、プランBやプランCまでどうするのっていうところまで考えた上でのメンバー構成になってるから、アップ中に誰かが怪我したとかってなるようなよっぽどのことじゃない限り、直前でやることはないですよね。
岩本 そうなると、試合がいざ始まって、5分ぐらいで“あ、練習とちょっと違うぞ”とか、“いつもはうまくいってたのに、今日はちょっとズレてるな”ってときはどうするの? すぐには選手を代えないでしょ? やっぱ選手に悪いから。
渡邉 うん、戦術的な理由で選手を前半に代えたことって、俺、2回くらいしかないかも。
それ以外は、選手に直接伝えて修正しようとは試みますね。本当は右をプッシュアップしてはめたいんだけど、明らかに、左をプッシュアップした方が今日はいいなっていう時は、まあ、だいたい真ん中の人間、だからボランチとかをどこかのタイミングでつかまえて、“はめ方を逆にしよう”って伝えたりとか。
――大幅な変更は、前半ではやらない?
渡邉 そうですね。
――2回ぐらい選手を代えたというのは?
渡邉 そのうちの1回は、もう、どうしようもなかった。交代した選手は、試合が始まってからずっとフワフワして、ミスは多いし、そこで破られるしで。だから、本当に最初の部分しか出ていないです。
岩本 そういうのも含めてだけど、交代カードを切るときって、選手に説明ってするの?
渡邉 だいたい言いますね。その選手に関して言えば、その場では言わずに次の日に言いました。
岩本 交代の説明をしてくれるのっていいよね。理由を言わない監督もけっこういるからね。ブラジル人監督なんて、ダメってなると2か月ぐらいしゃべってくれない。それどころか、紅白戦すら出してくれない。