――渡邉さんはコミュニケーションを取るタイプ?

渡邉  一応、説明はします。次の試合でスタメンから外すとか、18人から外すとか、そういう場合は直接呼んで1対1で話はしますね。でも、それが本当にいいことなのかどうかは分からないです。説明っていう作業を、今まで一応はやってきましたけど、それってある意味言い訳みたいなものじゃないですか。

 それに、こっちとしてはちゃんとした理由があるんだけど、その理由を受け入れられる選手とそうじゃない選手がいる。そこを一つ一つ相手に合わせて説明するっていうことが、たとえば、30人前後いる選手の間で不公平になるかもしれない。だから、聞いた話だと、他の監督の中にはそういうことを一切選手に話さないってこともあるし。そういう意味で、説明は0か100かだと思うんです。

岩本  俺が知ってるある日本人監督は、選手にそういうことをまったくしゃべらないんだよね。冷たいなって思う部分もあるけど、でもその“冷たさ”が、いろいろな場面で勝負師につながったりする。それに、話さないってことが、不公平を生まなかったり、自分で考えたり、そこに使うエネルギーを他に向けるっていう意味で、チームを勝たせるうえでメリットがあったりする。だから、分かれるよね。すごい説明してくれる監督と、全然しゃべらない監督。

 ただ、選手としてはしゃべってもらったほうがいい。何も言われないと、考えはするんだけど、“なんなんだ⁉”って思いは持つからね。

――渡邉さんは、伝えてきたことがいいことか分からないって思うようになったといっていました。思い当たることがあるんですか?

渡邉  うーん。難しい問題なんだけど、選手を守ってる感がすごく強すぎるのかなって。もともと、僕は選手からコーチ、そして監督って立場を代えながら、仙台での時間が長かったから、なんか、“ナベさんならそういうのやってくれるよね”っていう空気を作ってしまったような気がして。監督になった最初の頃はそんなこと全然思わなかったんだけど、監督も長くなってきて、結局全部それをやることで、ちょっと甘やかしてるじゃないかなって。

岩本  優しいね。

渡邉  選手を自立させるためには、ある程度ほったらかしにして、“自分で考えろ”くらいにあえて突き放したほうがいい場合もあるのかなと。これが、仙台ではない、僕と関係がまったくないチームで監督をやったとしたら、もっと違う発想もあると思うんです。結果がどっちに出るかは分からないですけど。でもほんと、仙台での時間が長かったからこそいろんなこと考えちゃって。良かれと思ってやってたことは本当なんだけど、でもそれが、実はあまり選手のためになってないんじゃないかっていうのを考えて、自分のやり方を疑ったことも多少ありました。

 

 

※続きは近日更新。

 

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