――ドイツ代表のキーマンはやはりクロースとミュラーあたりでしょうか?

「クロース、ミュラー、ノイアーです。ノイアーは復帰したらキーマンになる。ラインを押し上げた時に頼りになります。80パーセントくらいの確率でシュートをセーブしますし、ハイボール対応、クロスの処理、ディフェンスライン裏のカバーのどれもが素晴らしい。ノイアーがいるだけで、チームメイトは安心できます。足下も上手いですし」

――ここのところテア・シュテーゲンの評価もグングン上がっていますよね。

「すごく良い。今年は本当によくやっています。パーソナリティーの部分が良くなりました。前は“良いキーパー”止まり。バルセロナではビルドアップでも貢献しています。でも、フンメルス、ボアテング、ノイアーのトライアングルが一番いいですし、なにより安心。テア・シュテーゲンも素晴らしいですけど、安心や信頼感という意味ではまだまだ。何年か一緒にプレーしないと得られないものですから」

――リトバルスキーさんが監督だったら、ドイツ代表に招集したい選手は?

「まあ、全員呼ばれているかな(笑)。面白いと思うのはレロイ・サネ。他とはちょっと違うプレースタイルの持ち主です。3月の試合ではあまり上手くいかなかったけどね。マンチェスター・シティではとてもいい。あとヴェルナーのスピードは戦術的な意味で面白い。 ここぞというタイミングでCBの間に抜けたり、裏に飛び出したりしています。ヴェルナーの出現で攻撃のバリエーションがすごく増えました」

――注目しているドリブラーはいますか?

「ニャブリ(ホッフェンハイム)です。このところ、何試合か連続で良いプレーを見せています。Uー21代表時代も良かったけど、プレーの幅が広がった今はもっといい。外だけじゃなくて、中にも入ってくる。ロイスが足に問題を抱えているので、ニャブリは(ワールドカップメンバーに入る)可能性があります」

――最後の質問です。リトバルスキーさんは西ドイツ代表の一員としてワールドカップ優勝を経験しています。あの90年大会のチームの雰囲気はいかがでしたか?

「私たちのチームにはマテウス、フェラー、ブッフバルト、クリンスマンなどがいました。彼らとは79年からUー21代表を含めて、10年くらい一緒にプレーしていたので、チームはファミリーのようでしたよ。でも、ファミリーの中でも喧嘩はある。ほら、バースデーパーティーをしても、最初の2時間は良かったのに、だんだん『お前のあそこ良くない』って始まる(笑)。そういうのはありましたよ。でも、全ては成功するための喧嘩ですからね(笑)」

(この記事は2018年5月25日に発行された『サッカー批評89』(双葉社)に掲載されたものです)

ピエール・リトバルスキー

1960年4月16日生まれ、ドイツ・ベルリン出身。78年、ケルンでプロデビュー。10 番を背負ってキャプテンを務める。ドイツ代表としてW杯に3回出場し、優勝1回、準優勝2回。Jリーグ初年度の93年にジェフユナイテッド市原に移籍。日本で通算4年間プレーした後に現役を引退した。横浜FCを皮切りに監督やコーチを経験し、2010年より働くヴォルフスブルクではアシスタントコーチ、代理監督を経て、現在はチーフスカウトを務める。

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