ピエール・リトバルスキー
ピエール・リトバルスキー

(この記事は2018年5月25日に発行された『サッカー批評89』(双葉社)に掲載されたものです)

取材・文・撮影◎遠藤孝輔 Kosuke Endo

W杯で優勝1回、準優勝2回の実績を持ち、Jリーグ創世記に日本でもプレーした名選手、“リティ”ことピエール・リトバルスキー。ドイツと日本の両方をよく知る男に、「なぜドイツが強くなったのか?」を教えてもらった。

 

ロシアW杯でキーマンになるのは?

――ロシアワールドカップで2連覇を目指すことになるドイツ代表についても聞かせてください。現在のチームの強みと弱みは何でしょうか?

「強みはボールポゼッション。日本人も好きですよね。私はJリーグの試合をよく見るけど、日本とドイツのボールポゼッションはちょっと違う。ドイツの方は最後の最後にゴールを奪うためという目的がしっかりしています。中心になっているのはレアル・マドリーのクロースです。彼は中盤、ハーフウェイラインのところで絶対にミスをしません。5メートル、10メートルのパスを使って、簡単にプレーしている。最後の20、25メートルはリスクマネジメントしながら、完璧なタイミングで完璧なボールを味方に出しています。ユベントス対レアルの試合では最後の最後に、クロースのパスをきっかけにロナウドのヘディングによる折り返し、PK獲得につながっていきました」

――決めるべき選手が揃っているのもドイツの強みでしょう。

「その通りです。ゴール前でチャンスを作れば、ミュラーが80~90パーセントの確率で点を奪います。それからスピードのあるヴェルナーの台頭も大きい。ポゼッション主体のチームに、新たなプレースタイルをもたらしました。全体のラインをあえて下がって、カウンターを仕掛ける形です。最後の30メートルで、しっかりと強いボール(パス)を出せる選手が多いのもドイツと日本の違いでしょう。それからセットプレーの強さも特長です」

――ドイツ代表は全体的に高めのラインを設定していますね。

「ラインが高いので、結構リスキーではあります。ただ、ドイツのCBは1対1に強いので、カウンターを受けても止められる。キミッヒとヘクトアの両サイドバックはスピードがあるから、背後へのロングボールを心配しなくていい。日本だとハイボールをみんな警戒しますよね。それからドイツはボールを失ったときのプレッシングが上手い。1人じゃなくて、連動してプレスをかけていきます。それを各選手がわかっている。だから、すぐにボールが獲れる。それがいいポイントです」

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