モンスタークラブと「冒険」し続けるために

 だが、リーマンショック以降、スペインの景気は停滞を続けており、欧州連合の支援があっても農業と観光業がメインの収入であるアンダルシア州にはお金を落とす企業は決して多くはない。若年層の失業率は2013年の調べでは45・6%と2人に1人が職に就けないもので、スペイン国内ではなくドイツやフランスといった欧州の富裕国で若者達は生きるための術を探すというのが、セビージャが本拠を置くアンダルシア州の経済事情だ。だからこそ、サッカーはアンダルシアの人々にとって日々の陰鬱な気分を晴らすことのできる週末の楽しみでもあり、国内リーグのタイトル獲得をセビージャのサポーターは夢見ている。そのことをモンチは十分に理解している。だが、2強とセビージャの間には簡単に埋めることのできないチームとしての資金力の差があることを、モンチは忘れてはいない。

 確かにTV放映権料の見直しで、2強がほぼ半分を占めていた不平等な分配は終わった。だが、それでも2016 -2017シーズンの分配はバルセロナ、レアル・マドリードが1億5000万ユーロ(約168億円)に対してセビージャは半分の7700万ユーロ(約86億円)。ユニホームやスタジアムのスポンサー料などを考慮したクラブ予算を比較すると、その差は正直えげつないものになっている。今季のセビージャの予算は歴代最高の1億3000万ユーロ(約145億円)と言われているが、2強のTV放映権料にも満たない額でしかない。バルセロナのクラブ予算は6億3300万ユーロ( 約710億円)、補強費だけで1億2000万ユーロ(約134億円)があてられており、レアル・マドリードもバルセロナとほぼ同額がクラブ総会で合意を受けている。単純に両クラブとの間には追いつくことが決してできない5倍の資金差がある。

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