※この記事は2016年10月28日に発行された『サッカー批評83』に掲載されたものです。
文・山本孔一
清武弘嗣の移籍によって、日本でも注目度が急上昇しているラ・リーガのセビージャF C。クラブ規模はバルセロナやレアル・マドリードほど巨大ではない。だが、ブレイク前の有能選手をオーガナイズすることで常に強豪であり続けている。そのメソッドは、今や「セビージャに移籍すれば成功が約束される」とまで言わしめるほどだ。そんなクラブの象徴と言えるのがSDであるラモン・ロドリゲス・ベルデホ、通称モンチ。彼にSDの真髄を激白してもらった。
「我慢して見守ること。例えば、ダニ(・アルベス)だが、彼がその力を発揮し始めたのは入団してから1年以上が過ぎてからだ。我慢することは結果がすぐに求められるビッグクラブではできない。セビージャというチームだからできることでもある。選手にはすぐに新天地で活躍できるタイプと時間がかかるタイプがいる。時間がかかるからといってその選手が悪い選手ということはない。もちろん、すぐに結果を出してくれることは選手を含め全員にとって嬉しいことだが、それができない時は焦ることなく見守る姿勢を示すこと、選手に信頼を与えることが周囲、特に獲得してきた自分には必要なことだと思っている」
セビージャという土地(クラブ)に合うと自信を持って撒いた種(獲得した選手)が芽吹き、実るのを待つだけ。早急に結果を求めることなく、本来のパフォーマンスが発揮できるように辛抱強く我慢して見守っているだけだ、とモンチは語る。
目を光らせるべき下部組織の充実度
セルヒオ・ラモス、レジェス、ヘスス・ナバス、アルベルト・モレーノ、プエルタ、カペル、セルヒオ・リコ。彼らに共通しているのはセビージャの下部組織出身のスペイン代表選手たちであること。SDの職務はクラブ全体のプロジェクトをデザインすることであり、もちろん、モンチは下部組織を充実させることが強いチーム作りへ繋がることをその体験から分かっている。
セルヒオ・ラモスをレアル・マドリードに2700万ユーロ(約30億円)、ヘスス・ナバスをマンチェスター・シティに2500万ユーロ(約28億円)、レジェスはアーセナルに2400万ユーロ(約27億円)、アルベルト・モレーノはリバプールに1800万ユーロ(約20億円)で放出した。
だからといって生え抜き選手たちを「金のなる木」だとはモンチは考えていない。