■ ロングカウンターで勝ち切ったが…。敵将が誇らしげに語り、長谷部監督が硬い表情を見せた理由

 しかし、1点を先行された岡山はそれで怯むことなく、その後も高い位置でプレスをかけ続けて勇敢に戦った。90分を通じてのシュート数では川崎の6本に対して岡山は倍以上の13本を放った。

 パスがつながらずに苦しんだ川崎はやはりカウンターの形で2点目を決めた。後半開始早々の51分にはGKのスベンド・ブローダーセンのスローイングからゴール前にボールを送り込み、最後は相手ペナルティーエリア内を伊藤がドリブルで切り裂いて、最後はマルシーニョが決めて2点を先行した。

 しかし、岡山はさらに激しく反撃を試みる。川崎はゴール前にブロックを敷いて守っていたが、ついに75分にMFのオベルダンにボールを奪われて、そのままミドルシュートを決められた。さらに77分にはこの日、パスにシュートにと大活躍の江坂任のミドルシュートがクロスバーの下を叩く場面もあった。

 1点差を守り切れたのは、川崎にとってむしろ幸運と言うべき試合展開だった。

 試合後の記者会見場では岡山の木山隆之監督が誇らしげな表情だったのに対して、川崎の長谷部監督の表情は硬かった。川崎にとっての光明は、こんな内容の試合でもロング・カウンターという川崎が本来目指しているものではない形で2ゴールを奪い、そして、守備陣が奮闘してなんとか1点差で逃げ切れたことだろう。

 神戸戦のように相手のプレッシャーが少しでも緩くなれば、そのテクニックを生かして美しいサッカーができるのが川崎というチームだ。風間八宏監督が築き上げ、鬼木達監督が花開かせた黄金時代を彷彿させるパス・ワークは今も健在だ。

 だが、岡山戦のように前から激しくプレッシャーをかけられると、そのテクニックを発揮することができなくなってしまう。

 黄金時代の川崎なら、どんな激しいプレッシャーを受けても、あるいは雨でピッチがスリッピーな状態であろうとも、それでもパスをつなぐことでプレッシャーを回避して自分たちの目指しているサッカーを現実化できていた(まあ、黄金時代の川崎には現在イングランドのプレミアリーグでプレーしている選手が何人もいたのだから、当然だったのかもしれないが……)。

 川崎が優勝争いに絡んでいくには、岡山戦のような現実的な勝ち方ももちろん必要だ。だが、しかし、黄金時代を知っている僕は、川崎にはついついパスをつないでビルドアップする美しいサッカーを期待してしまう。

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