■「優勝を目指してこの4年間やってきた」

 華のある選手に憧れ、技を真似した中村は、やがてプロのアタッカーになった。その中村が今、日本代表の一員としてワールドカップに近づいている。ただ前回のカタール大会は、テレビで見ていた。日本代表がドイツ、スペインを破った歴史的な大会。その記憶は中村にとっても強烈なものだった。

「前回大会のカタール大会は、圧倒的に印象に残っている。劇的勝利のドイツ戦と、スペイン戦。あれが一番じゃないですかね。テレビで見ていただけですけど、『すげえな』って。ファンのひとりとして、ちょっと鳥肌が立ちました」

 当時の中村は、まだその熱狂の輪の中にいなかった。だがカタール大会後、中村は日本代表に招集されるようになった。今はあの熱狂の舞台を、外から見るだけではない。自分もその中に入っていくイメージがある。

「カタール大会の次の活動から呼んでもらって、そこからコンスタントにずっと呼んでもらえている。最終予選も一緒に戦いましたし、アジアカップも戦いました。自分もチームの一員として、あのような経験をしたい。チームを助けられたらいいな、と」

 個人としてどのような大会にしたいか。そう問われると、中村は個人の成績より、まずチームの目標を口にした。

「チームで、一つでも上の順位を目指す。日本代表は、優勝を目指してやっているので。何の疑いもなく、優勝を目指してこの4年間やってきた。一つでも多くの試合に勝って、チームの勝利に貢献できればいい。それだけですね」

 ウェンブリーで得た自信。フランスで孤軍奮闘し、積み上げた14得点。そして、三笘薫の負傷という非常事態に直面した代表で担うべき重責。少年時代に憧れたワールドカップへ向け、それらはすべて一本の線でつながっている。

 中村敬斗は今、ピッチの中から世界最高の舞台と向き合おうとしている。その覚悟の歩みは、すでに始まっている。 

中村敬斗(なかむら・けいと)プロフィール  2000年7月28日生まれ、千葉県我孫子市出身。スタッド・ランス(フランス)所属。 三菱養和SCユースから2018年にガンバ大阪へ入団。2019年にオランダのトゥエンテへ期限付き移籍し、欧州でのキャリアをスタートさせる。その後、シント=トロイデン(ベルギー)、LASKリンツ(オーストリア)を経て、2023年にフランス1部のスタッド・ランスへ完全移籍。2024-25シーズンの降格に伴い、現在はリーグ・ドゥでプレー。最終節での4ゴールを含む公式戦14ゴール3アシストを記録し、2年連続の2桁得点を達成した。2023年にA代表デビューを果たすと、高い得点能力と冷静な判断力を武器に、森保ジャパンの左サイドにおける不可欠な存在として活躍している。

PHOTO GALLERY ■【画像5枚】「少ないチャンスを決めきる」中村敬斗スタッド・ランスでの雄姿
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