大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第178回「31年前のアメリカW杯との違い」(1)来年の第2回アメリカ大会の放映権料は「60倍」の6000億円、日本が払う「割り当て金」は?の画像
1994年大会の主役のひとり、ロベルト・バッジョ。58歳になった「イタリアの至宝」は、この夏アメリカで開催されたクラブW杯に、その姿を現した。撮影/原悦生(Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、「まさに隔世の感」。

■全104試合中「78試合」がアメリカ開催

「アメリカのワールドカップ」である。来年のワールドカップは、カナダ、メキシコとの「北米3か国」の共同開催なのだが、実際には、カナダとメキシコではそれぞれ13試合ずつしか行われず、全104試合のちょうど4分の3、すなわち75%に当たる78試合がアメリカで開催される。「2回目のアメリカ大会」と表現しても、あまり文句は出ないだろう。

 そのアメリカ国内がインフレのうえに、1ドルが160円近くという「円安」のダブルパンチにより、日本人の感覚ではとても物価の高い国になってしまっている。今年のFIFAクラブワールドカップを取材に行った仲間の記者たちの話によれば、「ホテル代は4万円、ファーストフードの店に行っても1食3000円ぐらいかかってしまう」という。

 それは、31年前、1994年にアメリカで開催されたワールドカップのときとはまったく状況が違う。物価や為替レートだけの話ではない。たくさんの面で、今回は、「31年前のワールドカップ」とは大きく違うのである。今回は、1994年アメリカ・ワールドカップがどんな大会だったのか、簡単に振り返ってみたい。

 Jリーグのスタートは、1年前の1993年のことだった。それまであまり人気のなかったサッカーという競技がいきなり国民的な注目の的になり、日本全国に熱狂的なファンが誕生した。日本が「サッカー国」になって初めて迎えたワールドカップ。日本からの取材希望者も一挙に増えた。あまりに多くなったので、取材パスを割り当てる日本サッカー協会が悲鳴を上げ、最終的に大がかりな「抽選会」まで行うはめになる。

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