■しっかりと「決定機」を作り続けた前半

 そして、その成果が如実に出たのが鹿島戦の前半の45分間だった。

 ロングボールを使って前線に当ててくる鹿島の攻撃に対して、東京Vの守備陣は激しく体を当てていった。3人のCB(右から宮原和也、林尚輝、谷口栄斗)の間の連係、カバーも良かった。この東京Vの激しい守備に対して、鹿島の選手たちの動きが止まり、思わずボールを下げてしまう場面も増えていった。その背景には、「あと2つ勝てば9年ぶりのタイトル」という重圧もあったのだろう。

 もちろん、鹿島にもチャンスはあったが、いずれも単発だった。

 東京Vはしっかり守備をするだけでなく、奪ったボールを丁寧にDF陣の間で回し、さらにボランチの森田晃樹平川怜につないだ。2人にも技術力があり、正確なパスで前線につなげた。

 東京Vは1トップに染野唯月を置き、シャドーには左に齋藤功佑、右に松橋優安を置いたが、齋藤は中盤に下りてパスをさばき、松橋は鹿島の守備ラインの裏に動く動きを繰り返すというように、役割分担もはっきりしていた。

 東京Vには失礼な言い方だが、弱者が強者に挑戦するこういう試合では、弱者がボールを握って攻めていても、なかなか決定機に結びつけられないという展開になりがちだが、東京Vはしっかりと決定機をつくり続けた。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4