藤田譲瑠チマは「5億9000万円」でドイツへ!成功した「DMMと前オーナー」の新ビジネス、ピッチ上の大半が日本人でも「町の誇り」に?【サッカー日本代表を支える「欧州の小クラブ」】(3)の画像
パリ五輪キャプテンで現在、A代表で活躍する藤田譲瑠チマは今夏、シントトロイデンからドイツ1部ザンクトパウリへ移籍。5億9000万円の移籍金を報じられた。撮影/原壮史(Sony α1使用)
■【画像6枚】スタジアム、駅、ホテル、街のシンボル…サッカー日本代表を支える「シントトロイデン」の街を歩く!

 年内最後の活動をおこなっているサッカー日本代表で、最も多くの人材を送り出しているクラブがある。けっしてビッグクラブとは言えない、ベルギーのシントトロイデンVVだ。来年おこなわれるワールドカップで優勝という大きな目標に掲げる日本代表を、欧州の小クラブはどのようにして支えているのか。サッカージャーナリスト大住良之が、その「マジック」をひも解く!

■スタジアムと関連施設は「前オーナー」が所有

 だが、DMMは「プロサッカークラブ」という、いわば「ソフトウェア」を買い取っただけだった。スタジアムとその関連施設は、現在も前オーナーのローラン・デュシャトレが所有している。

 実業家であるとともにベルギーの国会議員であり、当時欧州でいくつものプロクラブを所有していたデュシャトレは、シントトロイデン駅から歩いても15分ほどの「スタイエン」というスタジアムを徹底的に商業化することを企画、2011年から2014年にかけて大改修工事を行い、現在のスタジアムを完成させた。

 大きな特徴は、スタジアムに併設してショッピングセンターや貸事務所、ホテル、フィットネスセンターをつくったことだった。ホテルはこの町で最も近代的な設備を誇り、ショッピングセンターには試合がない日にもたくさんの人が訪れ、「スタイエン」は現在もデュシャトレ前会長に多大な利益をもたらしている。2023年2月には長野県安曇野市の「大王わさび農場」が命名権を獲得し、「大王わさびスタイエン」となった。

 スタジアムの収容は1万1756人と小ぶり。柏レイソルの「三協フロンテア柏スタジアム」と同程度の規模と言えるだろう。ただ、ピッチは人工芝。気候的な問題でも、天然芝ピッチの管理費節約のためではない。ピッチの下に800台も収容する駐車場をつくるためだった。この駐車場が、現在、ショッピングセンターやホテルを成功させている。ピッチを人工芝にすることで「軽量化」を図り、駐車場をつくるというアイデアは卓抜だった。

PHOTO GALLERY ■【画像6枚】スタジアム、駅、ホテル、街のシンボル…サッカー日本代表を支える「シントトロイデン」の街を歩く!
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