後藤健生の「蹴球放浪記」第289回「ヨーロッパ人はいいなぁ」の巻(1)現フランス代表監督は珍しい例外、ブラジル代表アンチェロッティ監督は早くもポルトガル語を習得、なぜか?の画像
レアル・マドリードなどで数々の栄光を手にしたイタリア人のカルロ・アンチェロッティが、ブラジル代表監督に就任。そして、ポルトガル語で…。 撮影/原悦生(Sony α‐1使用)
 サッカーは「世界の共通言語」と言われるが、そのサッカーを追って世界中を旅する蹴球放浪家・後藤健生は、経験から東アジアの国々に“ある提案”があるという。元日本代表チーム通訳フローラン・ダバディ氏の言葉をヒントにした、言語習得が容易になる「驚きのプラン」とは?

■元トルシエ通訳が代表監督に「ダメ出し」

 フィリップ・トルシエの通訳兼アドバイザーをしていたフローラン・ダバディ氏はこんなことを言っていました。

「フランス人なら、少し勉強すればイタリア語はすぐにしゃべれるようになる」

 そして、こう続けたのです。

「何年もユベントスでプレーしていたディディエ・デシャン(現フランス代表監督)がイタリア語をしゃべれないのはおかしい」

 まあ、ダバディ氏は語学の天才だからそう思うのであって、語学が得意でない人にとって外国語学習はそう簡単ではないとは思います。ちなみに、サッカーをやらせれば、たぶんダバディ氏よりもデシャン氏のほうがうまいはずです。

 しかし、いずれにしてもヨーロッパ人の中には何か国語もしゃべる人が多いのは事実です。

 とくにオランダとかスイス、エストニアといった小国の人たちは、自分の国の言葉が国際的に通用しないと思っていますから、大国の言葉をしゃべる人が多いようです(逆にイギリス人やアメリカ人は、世界中どこに行っても自国語が通じるので外国語をしゃべれない人がいっぱいいます)。

 かつては東ヨーロッパではドイツ語が地域内の共通語でしたし、外交官の間ではフランス語が共通語でした。また、第2次世界大戦後にソ連占領下の東ヨーロッパ諸国で社会主義政権が樹立されるようになると、ロシア語が地域の共通語のように扱われました。

 しかし、最近は世界中どこに行っても英語が共通語となっています。

「英語は文法が難しくないので外国語として覚えるのに向いている」という理由はあるでしょうが、要するに19世紀にはイギリス、20世紀にはアメリカが世界最大の経済大国であり、また世界最強の軍事力を持っていたから共通語になったのは間違いありません。

 もし今でもスペイン帝国が世界を支配していて「無敵艦隊」が本当に無敵だったら、スペイン語が共通語になっていたことでしょう。チンギスハン(ジンギスカン)のモンゴル帝国が長く存在し続けていたら、モンゴル語が共通語化していたかもしれません。

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