■アンチェロッティ「最大のミス」
ブラジルにとっては韓国も日本も格下である(はずだった)。従って、アジア遠征はアンチェロッティ監督にとっては勝負にこだわるよりも、さまざまな形をテストすることが最大の目的だった。「テストには格好の相手」と考えたのだろう。
日本戦も前半に想定通り複数得点を奪って優位に立ったのだから、ここでまた新しいことをテストしようと考えるのは当然のことだ。
だが、この交代は最悪のタイミングだった。
日本が1点を返し、ミスを犯したブラジルの守備陣は受け身に回っていた。極端な言い方をすればパニックに陥っていた。そして、日本は「行けるぞ」という気持ちで攻撃の厚さを増していた。
そんなときに、テストのための交代をしたものだから、ブラジルの組織は崩壊してしまった。あの状態ではテストにもならない。
テストを行うにしても、まずはしっかりと守備を立て直して、安定感を取り戻してから交代カードを使うべきだったのだろう。こうして、日本の攻撃が機能し始めた。
62分の同点ゴールはGKの鈴木彩艶が起点になってビルドアップ。右サイドの伊東純也、堂安律が絡んで、最後は伊東のクロスを逆サイドのWBである中村敬斗がボレーシュートを決めたもの。まさに、サイド攻撃を生かす日本にとって理想通りの得点だった。しかも、クロスの対応ができなかったのも、中村のシュートのクリアに失敗したのも、またもファブリシオ・ブルーノだった。
そして、日本の逆転ゴールもGK鈴木のロングキックから。上田がヘディングで落として伊東につなぎ、伊東のクロスを上田が狙って相手(ファブリシオ・ブルーノ)に当たってCKとなり、伊東が蹴ったCKを上田が強烈なヘディングで決めた。
これも、日本にとっては狙い通りの形のゴールだった。
1点目こそ、相手の信じられないようなミスによる得点だったが、2点目、3点目は日本にとって理想の形のゴールだった。
単に、ブラジル相手に勝利したというだけでなく、こうした美しいゴールを決められたのだから、チームに大きな勢いを与えることになるだろう。