■流れを変えた「81分」最後の交代枠
後半、中盤の五分のボールを巡って激しい戦いが続くと、ガンバは60分に宇佐美貴史、デニス・ヒュメット、美藤倫の3人を投入。わかりやすく強度を上げ、再び試合の主導権を奪った。
鹿島は66分、72分と選手交代で立て直しを図るが、なかなか圧が強まらない。それでも、GKの早川友基を中心に、粘り強い我慢の守りを続けた。
そんな流れを変えたのは、81分に最後の交代枠で投入された荒木遼太郎。アタッキングサードへの進入地点で寄せに負けることなく前を向くと、チームとしてゴールへのルートを作り出すようになっていった。我慢の展開を見守っていた満員のホームスタジアムは一気に盛り上がり、終盤の猛攻を後押しし続ける。
そして90+1分、右サイドから執拗にボールを入れたことがガンバのハンドにつながり、PKを獲得した。
荒木がボールを持ったものの、チームの決定でキッカーは徳田に。前節の名古屋戦で途中出場ながら圧巻の2ゴールを記録した18歳は、ものすごいプレッシャーの中でも落ち着いて低いボールを蹴った。
しかし、これはガンバのGK・一森純が読み切ってストップ。
セカンドボールに反応できないほどガックリと肩を落としてしまった徳田に、三竿健人がすぐさま駆け寄り、厳しい表情でその態度を正させた。
プレーに戻った徳田は、結果で挽回すべく最後まで走ったが、試合は0-0のまま終わりを迎え、タイムアップの笛とともに崩れ落ちた。
三竿と知念慶に引き起こされ、再び三竿から言葉をかけられたが、試合が終わってしまったことで、悔しさのあまりに顔を上げることができなくなってしまった。
すると、ユニフォームで顔をおおったまま、サポーターへのあいさつへ向かう徳田に鈴木が近づく。鹿島らしさを継承し、体現する背番号40は、声をかけながらそのユニフォームをつかむと、引き下げて顔を出させた。
大きな期待があるからこその厳しさであり、また、優勝へ向かっている鹿島でプレーするということの意味も示しているような一幕だった。
徳田はなんとか顔を上げようとするものの、どうしても感情が込み上げてくる。何度もユニフォームで顔をおおいながらピッチを周回し、目元を押さえながら、なんとかホームゴール裏へのあいさつを済ませると、彼は再びユニフォームで顔をおおった。
それを見ていた濃野公人が手でカメラと視線を遮ってあげたが、徳田は涙を拭ききると自ら顔を出し、再び感情が込み上げてきてしまうまでの、わずかな時間ではあったものの、次節の神戸戦へ向けたチャントを歌い始めたゴール裏を視界に収めた。文字通りの、見返してやる、というその表情には、もう鹿島らしさがあった。
「自分のせいで勝ち点2を失った」と自らの言葉でのコメントも残した徳田。鹿島の未来を背負うことを期待される18歳は、1試合でも早く、その勝ち点を結果で取り返すことに集中している。
神戸、京都、柏に勝ち点5差とした首位・鹿島は、ここから神戸、京都と2節連続でアウェイの地での直接対決に臨む。
■試合結果
鹿島アントラーズ 0-0 ガンバ大阪