■面白かったのは「暑さと高地」の影響?

 同様に、1986年大会ではアルゼンチンにはマラドーナをはじめダニエル・パサレラ、ホルヘ・バルダーノ、ホルヘ・ブルチャガがおり、フランスにはミシェル・プラティニやドミニク・ロシュトー、アラン・ジレスら、ブラジルにはジーコやソクラテス、カレカがいました。さらに、スペインのエミリオ・ブトラゲーニョ、メキシコのウーゴ・サンチェス、ソ連(ウクライナ)のオレグ・ブロヒン、デンマークのミカエル・ラウドルップと、各国のサッカー史を飾るスーパースターたちがいたのです。

「メキシコ大会が面白かったのは、暑さと高地の影響でヨーロッパの選手が運動量を発揮できず、テクニカルなサッカーになったからだ」という説もありますが、これだけのスーパースターがそろっていれば、どんな環境であろうと面白くならないはずはないと思います。

 とにかく、僕はこれまで13回のワールドカップを現地観戦していますが、1986年大会は最も面白かった大会でした。

 中でも最高だったのが準々決勝のブラジル対フランス戦。延長まで戦って1対1の引き分けに終わり、PK戦でフランスが準決勝進出を果たしたのですが、120分間、息つく間もないような戦いが続き、飽きる瞬間がまったくありませんでした。時計の針が120分に近づくと「まだ終わるな。もっと見ていたい」という気持ちになっていました。

 その人生で最高の試合と出会ったのが、ハリスコ・スタジアムだったのです。

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