■ペレにとって「最後」のワールドカップ

 メキシコでは1970年と86年の2回ワールドカップが開催されました。

 1986年大会はもともと南米のコロンビアで開催することになっていたのですが、コロンビアは治安が悪化したため開催を返上したのです。代替開催国としてアメリカ合衆国も手を挙げましたが、FIFAは「アメリカは広すぎる」という理由でアメリカではなくメキシコを選んだのです。

 2026年大会はアメリカを中心にカナダ、メキシコの3か国で開催されるのですから、今から考えれば「アメリカは広すぎる」というのはおかしな理屈です。

 この決定はメキシコのテレビ局「テレビサ」の政治力によるもの。同社とFIFA会長のジョアン・アベランジェには“特別な関係”があったのです。

 まあ、そういった利権絡みの話は別として、メキシコで開催された2度のワールドカップはどちらも大会史上で最も面白い大会になりました。

 1970年大会はペレにとって最後のワールドカップとなり、トスタン、リベリーノ、カルロス・アルベルトなどを擁するブラジルは南米予選から本大会決勝まで1つの引き分けもなく全勝で優勝しました。

 しかも、準優勝のイタリアにはジャンニ・リベラやサンドロ・マッツォーラ、ジャチント・ファケッティといった名手がそろい、西ドイツにはウーベ・ゼーラーとゲルト・ミュラー、フランツ・ベッケンバウアーがいたのです。

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